細胞培養でSFの世界が現実に… 美容における再生医療・最前線 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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細胞培養でSFの世界が現実に… 美容における再生医療・最前線

美容の権威に訊いた“根本治療としてのエイジングケア”


昨今、頻繁に耳にするようになった「再生医療」が美容業界にも定着しつつある。はたして美の領域における再生医療は私たちに何をもたらしてくれるのだろうか。注入療法の第一人者であり、『解剖から学ぶ ヒアルロン酸注入療法』(メディカルレビュー社)を上梓した古山登隆理事長に話を訊いた。


再生医療

■美容はゼロからプラスの領域へ

──────前回は「美」には「内・外・心」という概念が必要だというお話がありました

◉古山)──美容クリニックは「外」、つまり見た目だけではなく「気持ちや心」にもアプローチができると考えています。外見が今より綺麗になることで自信がつき、それが内面にポジティブな影響を与え、結果として幸せな人生に繋がっていきます。とくに今は人生100年時代と言われていますから、いくつになっても心身ともに健康でいられることが美においても大切なのです。

──────美容と健康が両論となると、今後はますますエイジングケアの需要が高まりそうです

◉古山)──「美しい老化」というのはありえません。美しくあるための「曲線」と「バランス」は年々崩れていきますし、加齢とともに細胞などのボリュームは減少していくわけですから、それに抗うのは不自然です。私自身「ナチュラルな美しさ」にこだわってきましたが、今年から再生医療でもある「真皮線維芽細胞療法」を提供できるようになりました。

──────「真皮線維芽細胞療法」とは何でしょうか

◉古山)──体の中でもダメージの少ない耳の裏から肌細胞を採取して培養し、肌の気になる箇所に注入する治療法です。そうすることでコラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸などをつくる真皮を活性化させることが可能となります。

【皮膚の構造】
■表皮
平均的な厚さは0.2mm。ターンオーバーと呼ばれる代謝のプロセスを経て、再生を繰り返す
■真皮
コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸といった線維から構成された肌の本体といえる部分
■皮下組織
表皮と真皮を支える最も内側にある組織。皮下組織の大部分が「皮下脂肪」

──────肌への効果やメリットはどのようなことが考えられますか

◉古山)──肌細胞の減少が原因であるシワやたるみ、クマといった症状の根本的な改善が望めます。自分の細胞ですから拒絶反応はほぼゼロですし、何よりもナチュラルに、肌老化の進行を遅らせることができます。再生医療ではPRP療法が有名ですが、肌細胞自体を活性化する治療法は「真皮線維芽細胞療法」だけです。
 料理や伝統工芸品に顕著なように、日本人は素材の良さを大事にし、丁寧に扱う特性があります。これは美容でも同様で「自分らしい美」を望む声は年々増えています。

──────メスや異物を注入することに関しては、一般的にまだまだ抵抗があります

◉古山)──日本は他国よりもそういった傾向が強いと思います。例えば韓国は、完璧に整った美しさを追求する『コリアンビューティー』が主流です。一方で私は、日本人特有の価値観を大切にした『ジャパン・ビューティー』を提案しています。急に容姿を変えるのではなく、少しづつ、ナチュラルに、その人らしい美しさを目指したエイジングケアを行う。ちなみに「真皮線維芽細胞療法」では自分の細胞を保管しておき、数年後に注入するということも出来るんですよ。

美肌
コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸を作り出す源が「線維芽細胞(真皮線維芽細胞)」。 若々しい素肌に密接な関わりを持つと言われている。

─────まるでSFの世界の話のようですね

◉古山──細胞の話なので少し難しく聞こえるかもしれませんが、そんなことはありません。なぜなら、科学や医学は、皆さんの夢を叶えるためにあるものですから。夢というのは「ずっと健康で長生きする」とか、その人にとって様々ですよね。そんな皆さんの想いに応えるために、私たちは「美」の領域で、日々挑戦しているんです。

─────美容の概念が変わります

◉古山──元々形成外科はマイナスからゼロにすることが目的でした。例えば火傷の治療などがそうです。損傷などでマイナスになった状態を、いかに元のゼロの状態に治してあげられるか。そんな形成外科の技術を活かして、「今よりも、さらに美しくする」という、ゼロからプラスの状態にすることができるようになってきています。美容がその人の人生を豊かにするための選択肢になってきていることは、素直に嬉しいです。

■「美容のオートクチュール」を提案

─────美容は人の夢や幸せを叶える手段だと言えますね

◉古山──そうですね。例えば先ほどお話しした真皮線維芽細胞療法では「親から子プラン」というものがあります。現在18~29歳までのお子様が将来、例えば20年後にお肌の悩みを抱えた時のために、あらかじめ若い肌細胞を保管しておくことが出来ます。つまり、親から子への未来のプレゼントですね。治療を希望する年齢になった時に、若い自分の細胞を注入して綺麗になれるんです。

─────未来の我が子にプレゼントですか…驚きました。

◉古山──できることがどんどん増えていますので、今後の様々な可能性を前向きに捉えて欲しいです。また、私がチェーン展開をしないのは、一箇所で様々な治療ができる場所でありたいと思っているからです。多くの専門家が集まることで、その人に合った「オートクチュール」的な美の提案ができると思います。

自由が丘クリニック
「美しい老化はない」と、美についての哲学を語る古山登隆理事長

─────それは患者にとって嬉しい限りです

◉古山──もちろん決めるのはご本人ですが、キレイになれる。幸せになれる。そのための選択肢は多い方が良いですよね。老化のメカニズムが明らかになってきて、解決策もいろいろとできています。「真皮線維芽細胞療法」も、現時点で扱っているクリニックは少ないのですが、大学病院で行うような質の高い治療を、地域のクリニックで行えるということは、患者さんにとって大きなメリットだと思います。

─────医学・科学の進歩によって選択肢が増えているのですね

◉古山──主人公は患者様です。「真皮線維芽細胞療法」をスタートしたのも「ナチュラルに綺麗になりたい」という人の声に応えたいと思ったからです。

─────最後に、今後のお考えについてお聞かせください。

◉古山──高齢化・晩婚化する日本においてエイジングケアのニーズはますます高まっていきます。冒頭にもお話しましたように、私はその人の外見だけを整えるのではなく、その人の人生を明るくしたい。美容が「人生100年時代の「QOL(クオリティ・オブ・ライフ)」を高めるための選択肢であり続けられるよう、これからも尽力していきたいです。

─────本日はありがとうございました。

◉古山──こちらこそ、ありがとうございました。


 これからの時代、美容を「人生を豊かにするための選択肢」と捉え、見た目とともに内面や心も美しく保つマインドを持つことこそが、正しいエイジングケアと言えるのではないだろうか。

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古山 登隆

ふるやま のぶたか

形成外科・美容外科 / 理事長 / 医学博士

日本の大学病院における“美容外科”を本格的にスタートさせ、美容医療をリードしてきた業界のパイオニア的存在。“メスを使わない若返り治療”を得意とし、特にボトックスやヒアルロン酸注入、糸によるたるみ治療は国際的にも高い評価を得ている。注入指導医のヘッド・ファカルティとして国内外の美容医療の発展に貢献している。



【中国での活動】

アジアを代表する美容外科医として世界各国へ技術指導に赴くかたわら、国策として「美容医療の発展と技術向上」を推進する中国においては、2018年に日本代表として人民政府と合意書を交わしており、中国国内のドクターを対象とした技術指導や学会講演にも力を注いでいる。 



【経歴】

●1981年─北里大学医学部形成外科入局

●1985年─チーフレジデント

●1987年─北里大学形成外科研究員

 医学博士取得[コラーゲン薄膜を用いた培養皮膚モデルの形態学的評価]

●1988年─北里大学 形成外科講師

●1991年─日比谷病院 形成外科医長

●1995年─自由が丘クリニック開設

●2005年─横浜市立大学 医学部 非常勤講師

●2019年─国立大学法人千葉大学 医学部形成外科 非常勤講師


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  • 古山登隆
  • 2020.03.30