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【三橋貴明 緊急寄稿②】経団連はグローバリズムの尖兵である

我々は特定の「誰か」にコントロールされている

■経団連=グローバリズムが求める政策が推進される仕組み

 日本国民は、特定年齢(現在は18歳)に達すれば、有権者として投票することで、主権を行使することができる。もっとも、現実には我々の一票で政治を変えることなどできない。何しろ、日本の有権者は約1億600万人もいる。我々の保有する日本国の主権は、一億分の一未満に過ぎないのだ。

「清き一票」というのは、確かにその通りではあるが、現実には一票のパワーは限りなくゼロに近い。というよりも、毛沢東ではあるまいし、一億分の一未満の主権で日本国の政治を好きに変えられるとしたら、そちらの方が危険である。

 だからこそ、我々の持つ「一億分の一未満の主権」を束ねる「中間組織」が重要になる。具体的には、企業、労働組合、連合、農協、医師会、経営者団体、建設業協会などの業界団体などである。 

 ビジネスの世界において、一人一人では小さすぎる消費者、労働者、農家などの購買力、交渉力、販売力をまとめ上げ、大資本に対抗するべく生まれたのが「組合」だ。

 例えば世界初の消費者組合である、ロッチデール先駆者協同組合。19世紀の中頃、イギリス産業革命の中心地であるランカシャー、マンチェスターでは大資本の小売りサービスが、消費者を「搾取」していた。消費者側には「他から買う選択肢」がなく、品質が悪い製品を高く購入させられていた。その背景から、ロッチデール協同組合は、消費者の販売力を束ね、大資本と無関係な店舗を開設し、適正な価格で購入できる場を設けたのだ。

 そして、政治の世界において極小な有権者の政治力を束ね、政治に影響力を与えるのが中間組織なのである。かつては、日本の政治において中間組織の力が強く、しかも「バランス」を取っていた。ところが、1980年代以降、「経団連」というグローバリズムを推進する中間組織のパワーが肥大化し、農協や医師会、連合、業界団体といった他の組織に対し「既得権益!」のレッテル貼りで攻撃を繰り返し、政治的パワーを削いでいくことになる。

 既得権益について云々言うならば、経団連にしても立派な既得権益である。とはいえ、経団連に「既得権益!」とレッテル貼りをする者は、少なくとも大手マスコミにはいない。

 要するに、経団連=グローバリズムにとって、「相対的に国民の利益を追求する組織」が邪魔だっただけの話なのだ。何しろ、国民を害するグローバリズムに猛烈に反対してくる政治勢力だ。だからこそ、経団連以外の中間組織の政治的パワーを削ぐプロパガンダが展開された。

 現在、すでに日本では中間組織の政治権力のバランスが崩壊し、国民は分断され、国家とダイレクトに結びつくようになってしまった。となると、国民と国家の接点となるチャネル、すなわち「マスコミ」を影響下に置く経団連=グローバリズムが求める政策ばかりが推進される。

 最終的に、
「中間組織によるしがらみのない政治こそが素晴らしい」
といった幼稚な考え方が蔓延し、国家と有権者を「ダイレクト」に繋ぐマスコミ情報のみで「いかなる政治」も可能な状況に至ってしまった。

 ポピュリズムというよりは、ナチズムに近い。

 さて、どうするべきなのだろうか。

 経団連を潰せ、と言いたいわけではない。経団連が解散したところで、別の「グローバリズムの政治勢力」が誕生し、パワーが肥大化すれば、結局は同じことになる。

 大事なのは「政治的中間組織が生む政治力のバランス」なのだ。適切な政治的中間組織、すなわち「しがらみ」なしでは、我々の持つ一億分の一未満の主権は、マスコミを操る特定の「誰か」にコントロールされるだけだという真実を、多くの国民が認識する必要があるのだ。

 

KEYWORDS:

『自民党の消滅』
三橋貴明 著

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三橋 貴明

みつはし たかあき

経世論研究所

所長

1969年熊本県生まれ。経世論研究所所長。東京都立大学経済学部卒業。2007年、インターネットの公開データの詳細な分析によって、当時好調だった韓国経済の脆弱さを指摘し、大反響を呼ぶ。これが『本当はヤバイ! 韓国経済』(彩図社)として書籍化され、ベストセラーとなる。その後も話題作を発表し続けると同時に、雑誌への寄稿、各種メディアへの出演、全国各地での講演会などで注目を集めている。

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