京王線の知られざる旧線(仙川~調布)【後編】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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京王線の知られざる旧線(仙川~調布)【後編】

ぶらり大人の廃線旅 第18回

空中写真で廃線を見つける楽しみ

 さて、その後はジグザグ歩きを繰り返したが、痕跡はまったく見つからないうちに布田停留場の跡地である常性寺(じょうしょうじ)にたどり着いた。旧甲州街道と、深大寺を経て三鷹へ通じる三鷹通りが十字に交わる布田駅前交差点の北東側である。寺は鎌倉時代の創建だそうで、江戸時代に入って甲州街道に面した現在地に移転してきたという。下総(しもうさ)国の成田山新勝寺から不動尊を勧請しているので「成田山」の標柱があるが、停留場跡といった看板は見当たらない。旧版の地形図によれば、停留場は砂利の敷かれた前庭のスペースにあったらしい。

写真を拡大 旧布田停留場のあった常性寺。旧甲州街道と三鷹街道の交差点北東側にある。

 空中写真でその先の現在線と合流するまではまったく痕跡も向きの一致した建物もないので、疲れたこともあってすぐ南側に位置する現在の布田駅に向かった。平成24年(2012)に地下駅となっているので、思えば最近の廃線跡もあるのだが、そちらはまた次の機会にしよう。

写真を拡大 平成24年(2012)に地下化された布田駅はまだ新しい駅舎。

 廃線跡をたどって歩くことはできなくても、空中写真で仔細にたどると家の向きに名残をとどめる跡は、実は全国各地に存在する。国土地理院のサイトで簡単に見られるので、ぜひ最寄りの地域でお試しいただきたい。旅客営業をしていなかった路線もあり、専用線(引込線)の跡地などでは、あまり知られていない存在もある。現地へ行ったら期待外れかもしれないが、不審者と誤解されぬよう(もっとも不審ではあるが)留意しつつ健闘を……。

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今尾 恵介

いまお けいすけ

1959年横浜市生まれ。中学生の頃から国土地理院発行の地形図や時刻表を眺めるのが趣味だった。音楽出版社勤務を経て、1991年にフリーランサーとして独立。旅行ガイドブック等へのイラストマップ作成、地図・旅行関係の雑誌への連載をスタート。以後、地図・鉄道関係の単行本の執筆を精力的に手がける。 膨大な地図資料をもとに、地域の来し方や行く末を読み解き、環境、政治、地方都市のあり方までを考える。(一財)日本地図センター客員研究員、(一財)地図情報センター評議員、日本地図学会「地図と地名」専門部会主査、日野市町名地番整理審議会委員。主著に『日本鉄道旅行地図帳』『日本鉄道旅行歴史地図帳』(いずれも監修/新潮社)『新・鉄道廃線跡を歩く1~5』(編著/JTB)『地形図でたどる鉄道史(東日本編・西日本編)』(JTB)『地図と鉄道省文書で読む私鉄の歩み1~3』『地図で読む昭和の日本』『地図で読む戦争の時代』 『地図で読む世界と日本』(すべて白水社)『地図入門』(講談社選書メチエ)『日本の地名遺産』(講談社+α新書)『鉄道でゆく凸凹地形の旅』(朝日新書)『日本地図のたのしみ』『地図の遊び方』(すべてちくま文庫)『路面電車』(ちくま新書)『地図マニア 空想の旅』(集英社)など多数。


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