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ドイツ人が「孫の顔が見たい」と言わない理由

男の価値は年収より「お尻」!?③

ドイツ人が「孫の顔を見たい」と言わない理由とは

 日本では女性がある年齢になると、親からの「孫の顔が見たい」プレッシャーがかかってきますよね。

 女性同士集まると、よくその話題になります。プレッシャーのかけ方は親それぞれで、「あなた、いつまでフラフラしてるの? ちゃんと結婚して、孫の顔を見せてちょうだい」と直球で娘に迫る親もいれば、「お友達はね、みんな孫がいて楽しそうなのに、私にだけいないの~(泣)」と自ら進んで被害者になってしまう親もいます。

 また、娘には表向き「あなたの好きなように生きるのが一番!」と言いながら、ふとしたところで「本音」をもらしてしまう親も。普段はリベラルな親を装っているのに、テレビを見たり同窓会に行ったりすると、一番の関心ごとは結局「人の結婚」そして「子供を産んだか」だということが娘にバレてしまったり。

 いずれにせよ、親の、特に母親のそういった「ふとした本音」を知ると、娘としては、今までの「あなたの人生なのだから、好きに生きていいのよ」というのはいったい何だったの? と複雑な気持ちにもなりますよね。

 やはり日本の親は息子よりも娘にこの手のプレッシャーをかけることが多いようです。まあ女性の場合、子供を産める年齢が限られているから、というのもあるかと思いますが……。

 こういった親の「期待」、そう「孫を持つことの期待」が娘の恋愛にもある種の影響を与えているようです。というのは、これを無視して独身でいる人は別として、「親の気持ちに応えてあげたい」と思う女性の場合は、必然的に「子供の父親としてふさわしい性格や経歴の人」、つまり、ゆくゆくは結婚に向きそうな人を恋愛の対象として選ぶからです。

 一方、ドイツでは、「親に孫がほしいって言われた」と話す女性にはあまり会いません。そこは、個人主義のドイツ、「娘の恋愛は娘の選択」という大前提が親の側にもあるのでしょう。

 でも実はそんな大前提よりも、実際には親自身(娘が35歳だとすると、親も60代や70代の場合が多い)が恋愛に関してまだまだ現役なので、自らの恋愛に忙しい、というのもあるのです(笑)。

 親が結婚していれば、当然結婚生活に忙しいですし、夫婦で南の島を巡るクルージングに出かけたり、夫婦で世界旅行をしたりしています(ちなみにこれは「結婚」という形をとっていない場合、つまり恋人はいるけど結婚していない場合でも同じで、その場合はパートナーといろいろ趣味や旅行に忙しいのですね)。

 カップルによっては、自分たちの手で家(一軒家)の内装を変えるのに忙しかったりと、あくまでもドイツの60代、70代の女性たち(母親たち)の関心は「自分たちの生活」なのでした。

 もしも30代の娘を持ったお母さん(60代や70代)がシングルの場合は、それこそ恋愛活動に忙しいので、娘に「孫!」などと言っている暇はありません(笑)。

「私も恋愛を楽しむし、娘や息子にも恋愛を楽しんでほしい」と思っている親がほとんどだと思います。

 もちろん、孫ができたらできたで喜ぶ人は多いですが、でもそこは必ずしも「孫」中心ではないのですね。

 ドイツでは孫がいないと人生がつまらない、とまで感じる人は少ない印象です。その背景には、ドイツは日本より「血」をあまり重んじない社会だということも関係しています。ドイツの60代70代の女性が、「小さい子が好き!」「小さい子供の面倒を見たい」と思ったら、ベビーシッターとして近所の子供の面倒を見るケースも多いです。

 また、最近はご存じのようにドイツは難民が増えているので、難民の子供を相手にボランティアをする人も多いです。社会に出て自分が好きな活動をしていれば、必ずしも血がつながった孫がいなくてもよい、と考える人は多いですし、実際に「血のつながらない孫」をかわいがる人も多い印象。

 たとえば、娘の結婚相手の連れ子(つまりは男が連れてきた前の奥さんの子供)を孫としてかわいがる、ということもよくあります。

 こればかりは人の「気持ち」であり、感覚的なものなので、どうして日本には「孫がほしい」と感じる人が多いのか、そして、どうしてドイツではそうでもないのか、と説明をするのはけっこう難しかったりするのですが、ドイツの雰囲気のようなもの、少し伝わりましたでしょうか。

(『男の価値は年収より「お尻」!?』より構成)

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サンドラ・ヘフェリン/流水りんこ

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【原作】サンドラ・ヘフェリン

1975年生まれ。ドイツ・ミュンヘン出身。日本歴20 年。 日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「ハーフとバイリンガル問題」「ハーフといじめ問題」など、「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。著書に『ハーフが美人なんて妄想ですから!! 』(中公新書ラクレ)、『ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(共著KADOKAWA)、『爆笑! クールジャパン』(共著/アスコム)、『満員電車は観光地!?』『「小顔」ってニホンではホメ言葉なんだ!?』(共著/ KK ベストセラーズ)など計12 冊。HP「ハーフを考えよう



【漫画】流水りんこ

漫画家。1983 年、『魍魎伝説』(廣済堂)でデビュー。ホラー漫画家として活動したのち、バックパッカー時代のインドでの経験や、インド人男性との国際結婚、2 児の育児を題材としたエッセイ漫画も執筆。代表作『インドな日々』(朝日新聞出版)、『インド夫婦茶碗』(ぶんか社)など著作多数。日常のささいなことを丁寧にユーモラスに描く作風が人気で、人物の表情の豊かさやギャグの面白さに定評がある。近刊に『満員電車は観光地!? 』『「小顔」ってニホンではホメ言葉なんだ!?』(共著/ベストセラーズ)、『流水さんの霊能者行脚』(ぶんか社)、『流水りんこのアーユルヴェーダはすごいぞ~! 』(主婦と生活社)など。HP「りんこNIVAS



 


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