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大谷翔平の怪我は回避できたか。考えるべきポイント――建山義紀の「野球プロ目線」

バッターとしての出場を回避すべきだったか。

肉離れはやっかいな怪我

 これについては栗山英樹監督も相当、頭を悩ませた部分だったと思います。なにせ、栗山監督はチーム方針として「全力疾走できない選手は使わない」と明言し、ぶれずに貫いてきたことで結果を出してきました。さらには、昨シーズン日本ハムファイターズがリーグ制覇を成し遂げた際、大谷翔平選手に向けた「手紙」として「大谷翔平の素晴らしさが体現されているのは、全力疾走する姿だ」と書いていたくらいです。

 

 開幕からバッターで出場をさせると決めた時点で栗山監督は大谷翔平選手に対し「全力疾走」と「ベースを右足で踏むこと」を禁止しました。それもすべて、怪我のリスクを減らすためです。栗山監督だけでなくチーム全体がもっとも危惧していたのが大谷翔平選手の怪我だったからです。しかし現実は、うまくいかなかった。なぜでしょうか。

 前回に指摘した走りこみ不足の影響もあったと思います。ただ、今だから言えることなのかもしれませんが、大谷翔平選手にとって「全力疾走をしない」という要求は、非常にハードルが高い要求だったということに尽きるのではないでしょうか。セーフになりたい、その一心で走る彼の良さであり、コントロールしなければいけない首脳陣にとってはもっとも難しい部分であったでしょう。

 大谷選手はいま、復帰に向けて一生懸命リハビリをしていますが、こうしてみていくと、考えなければならないことがいくつかあると思います。

 大谷翔平選手は日本人離れしたパワーの持ち主です。体の大きさ、そこから生み出される力……すべてが超一流。そのくらい「出力」が大きい選手は、比例して大きな怪我をしがちです。つまり、これからも彼くらいのレベルの選手には怪我のリスクがつきまとうということです。

 今回の怪我、肉離れというのはたちの悪い怪我です。僕自身、現役時代にずいぶんと苦しめられましたが、クセになりがちで何度も同じ箇所を肉離れしてしまう。すると怪我の怖さからめいっぱいトレーニングをすることができなくなり、結果筋力が弱くなり……という悪循環を生む可能性があります。骨折などは骨がくっついてしまえば完全に修復されますが、肉離れはそうはいかないのです。

 大谷選手の場合、まだ若いですから治るのも早いだろうと思います。しかし、ここで焦らせてはダメです。とは言っても、焦ってしまうタイプでしょうが、周りがしっかりとサポートをし、止めるべきところは止めていく、ことが必要でしょう。そして、この怪我をしている間にどうやって頭の中をリセットさせてあげられるか。これも周囲の役目だと思います。

 そして戻ってきた際には、起用するタイミングにおいて細心の注意を払い、「打っても走らなくていい」くらい割り切った発想も必要なのかもしれません。
関連:大谷翔平、監督室で示した無言の覚悟

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建山 義紀

たてやま よしのり

1975年12月26日生まれ。大阪府出身。 98年ドラフト2位で日本ハムファイターズに入団。ルーキーイヤーから先発ローテーションに定着し、6勝をあげる。以降、セットアッパー、ストッパーなどで活躍、日本一にも貢献。2010年オフ、FA権を行使しMLBのテキサス・レンジャーズに入団、13年にはNYヤンキースへ移籍。2014年6月に日本球界復帰(阪神タイガース)しこの年、現役引退。野球解説者として活躍中。


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