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教員へのさらなる追加業務=『学校の新しい生活様式』がはじまる

第31回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

多忙な教員

■新しい業務のすべてが「教員の仕事」となる

 文科省は6月16日付けで「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生マニュアル」(改訂版)を公表している。学校の衛生管理に関する具体的な事項をまとめたもので、「学校の新しい生活様式」というサブタイトルが付けられている。
 その冒頭には「私たちは、長期間、この新たな感染症とともに社会で生きていかなければなりません」とあり「3密(密閉、密集、密接)の回避」やマスク着用、手洗いの励行の徹底を呼びかけ、「新しい生活様式」の実践を求めている。

 「新しい生活様式」は5月4日に新型コロナウイルス感染症対策専門会議が示したもので、公共交通機関内での会話を控えたり、食事は持ち帰りや出前、デリバリーの利用を推奨するといったものだ。これを踏まえて「学校の新しい生活様式」を、どのように実践していこうというのか。マニュアルには「学校の役割」として次のように記されている。

「『新しい生活様式』を実践するためには、児童生徒等への指導のみならず、朝の検温や共用物品の消毒に加え、給食時間や休み時間、登下校時の児童生徒等の行動の見守りなど、地域のボランティア等の協力を得ながら学校全体として取り組む必要があります」

 ボランティア等にお願いするわけではなく、あくまで協力してもらうだけである。では、誰が主体になるかといえば、それは学校であり、つまりは「教員」である。朝の検温から下校時の見守りまで、子どもたちが「新しい生活様式」ができているかどうか、教員が指導監督しなければならないということだ。
 さらに、「家庭との連携」という項目もある。感染を防ぎ、感染を拡大させないためには、家族における「細心の注意が必要」という。もっともである。「ご家庭においても『新しい生活様式』の実践をお願いしたいと思います」と、マニュアルには述べられている。
 しかし、家庭の自覚を促すだけかと思うと、そうではない。マニュアルは、次のように続けている。

「PTA等と連携しつつ保護者の理解が得られるよう、学校からも積極的な情報発信を心がけるとともに、家庭の協力を呼びかけることが必要です」

 つまり、家庭でも実践するように学校が呼びかけなければならない、としているのだ。子どもたちの指導だけでなく、家庭の指導も学校の役割だというわけだ。マニュアルには、「可能な限り身体的距離を確保するとして、できるだけ2メートル(最低1メートル)空けることを推奨しています」とか、「マスクを外す際には、ゴムやひもをつまんで外し、手指にウイルス等が付着しないよう、なるべくマスクの表面には触れず」など細かく記されている。
 そして、こうしたことを指導するのは、「教員の役割」ということにされている。子ども同士が2メートル以内に近づいていれば「離れなさい」と、ひもではなくて本体を触ってマスクを外そうとしている子どもがいれば、「そこを触ってはいけません」と、常に目を光らせ、都度注意しなければならないのだろうか…。

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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