【北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線の思い出旅 後編】 | BEST TiMESコラム

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北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線の思い出旅 後編

廃止区間と現存する石北本線を行く

■ふるさと銀河線後半&石北本線に乗り換えて網走へ

快速「銀河」北見行き、足寄到着

 足寄駅周辺をぶらぶらしてのんびりと過ごした2時間後、ふるさと銀河線の北見行き列車がやってきた。1日1往復の快速「銀河」である。といっても、快速表示があるだけで、普通列車と同じ車両だ。しかもディーゼルカー1両のみ。立っている人がいっぱいいるみたいに見えたが、足寄駅で降りるために立ち上がった人の列だったので安心した。といっても、午前の普通列車に比べたらよく乗っている。進行方向窓側の席にはありつけなかった。
 快速列車なので、小さな駅には停まらない。足寄駅で買った、入場券と愛冠行きのきっぷセットでその名を知ったロマンチックムードの愛冠(あいかっぷ)駅もあっけなく通過だ。「恋の始発駅」だそうだが、それほど人気沸騰でもないみたいである。大々的に宣伝すればいいのにと思った。

快速「銀河」北見行き、足寄到着

 森を抜け、木立の間をくぐって次第に山深くなった景色の中を淡々と走っていく。30分少々で、足寄と並んで沿線の重要な駅の一つ陸別に停車した。かなりの人が降りて、車内はずいぶん寂しくなってしまった。陸別は日本で一番寒いところだそうで、冬にはオーロラが見えたこともある。まさに「ふるさと銀河線」の名にふさわしい駅だ。ここの駅舎も足寄駅同様、新しい。「オーロラタウン93」という名前で、道の駅との複合施設になっている。
 陸別駅で行き違いとなった池田行のディーゼルカーは、車体が鮮やかだった。アニメの「銀河鉄道999」のキャラクターを全面にラッピングしたもので、松本零士さんの協力を得て仕上げたものだ。銀河線の存在をアピールするために2両登場した。ただし、特別のイベント列車ではなく、普通の車両に混じって定期列車として走っている。

銀河鉄道999ラッピング車両と交換

 陸別駅構内は、ふるさと銀河線が2006年に廃止となったあと、りくべつ鉄道という鉄道保存展示施設となった。ディーゼルカーの運転体験や乗車体験もでき、北見方面へ1.6kmもの距離を列車が走ることもある。前述の「銀河鉄道999」の車両も2両とも動態保存されているという。遠いところだが、いつか再会したいものだ。
 陸別駅を出ると、列車は緩やかな上り勾配を進んでいく。人跡未踏の原生林におおわれた大自然の中を進む。白樺林が目に付くのも北海道らしい。線路脇の低いところには蕗が生い茂っている。突然、列車が警笛を鳴らしてスピードを落とした。野生動物が線路を横切ったらしい。エゾシカだろうか?北海道では珍しくない光景ではあるけれど、運転士は気が抜けない。
 分線駅に続いて川上駅を通過した。利用者が数人というので、北海道によくある秘境駅だと思ったが、1日ではなく、1年を通して数人だそうだ。確かに駅周辺には人家どころか人工物は何もない。いまだに駅が存在しているのが不思議なくらいだった。
 山越えが終わって、久しぶりに集落が現れると置戸(おけと)駅に到着。女子高生がひとりぽつんと列車を待っていた。夏休みなのでひとりしかいなかったけれど、本来なら多数乗車してくる時間のようだ。置戸と北見を往復する区間列車は何本かあり、この先は比較的利用者がいた。
列車は次第に畑の中を走るようになり、人家もまばらだが増えてくる。訓子府(くんねっぷ)駅で、久しぶりに対向列車とすれ違ったが、何と2両編成で、そこそこ乗っていた。こちらも、駅ごとに少しずつ乗ってきて、高校生のおしゃべりも聞かれ、活気ある車内に変わった。オホーツク沿岸最大の都市である北見が近くなったせいで、いつしか都市近郊のような、住宅や農家、駐車場などが入り混じった雑然とした風景の中を走っている。池田を出て以来、寂しげな景色ばかりだったので、見ていて元気がでてきた。
 左手に、突然、トンネルの中からJR石北本線の線路が現れた。山岳地帯ではなく市街地に掘られた日本最北の地下トンネルだそうだ。そのまま並走して終点北見駅に滑り込んでいく。ふるさと銀河線専用の駅ではなく、JR北見駅の中にあるホームに停車する。車内で運賃を精算すると、イラスト付きのふるさと銀河線精算済証明書を渡された。JRの改札口を通るときは、この証明書を見せることになる。ただし、私は北見駅では下車しないで、跨線橋を渡って別のホームに移動し、石北本線の普通列車で網走を目指した。JR北海道ではおなじみのキハ40系の2両編成だった。

北見駅に到着した快速「銀河」
北見駅下車時に配布された「ふるさと銀河線精算済証明書」

 かつては、池田駅から続く網走本線も、北見駅で分断され、ここから網走駅までは石北本線に編入されたために生き残ることになった。もっとも、特急列車が何本も走る動脈なので、存続するのも当然であろう。
 網走駅が近づくと、網走湖に沿って走る。網走というと刑務所、番外地という何だか暗いイメージがあるけれど、この当たりの車窓は素晴らしい。網走付近だと知らなければ、北欧あたりと説明されても信じてしまうだろう。そんな森と湖に囲まれた、息をのむような情景に見とれながら、この日の長い列車旅は幕を閉じたのである。

キハ40&特急オホーツク_網走駅ホーム
網走駅の縦の駅名看板

 

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野田 隆

のだ たかし

1952年名古屋生まれ。日本旅行作家協会理事。早稲田大学大学院修了。 蒸気機関車D51を見て育った生まれつきの鉄道ファン。国内はもとよりヨーロッパの鉄道の旅に関する著書多数。近著に『にっぽん鉄道100景』『定年からの鉄道旅行のススメ』など。 ホームページ http://homepage3.nifty.com/nodatch/


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