■国を挙げてスマート化を進めるエストニア

 ここで、国を挙げてスマート化を進めているエストニアについて取り上げたいと思います。

 エストニアでは2002年にデジタルIDカードが導入され、15歳以上の国民全員が所有を義務付けられました。このIDカードが、エストニアの電子サービスを利用する上での根幹となっています。

 IDカードを用いることで、納税、警察、教育、医療、選挙、会社設立など実に多くの公的サービスをオンラインかつペーパーレスで受けることができます。これにより国民・政府職員双方の手間やコストが大幅に削減されました。

 2014年にはe-レジデンシー(電子居住)法案が可決され、非エストニア居住者であってもエストニアのデジタルIDを発行しオンラインサービスを受けることができるようになりました。

 これにより、エストニアにおける電子認証などを利用し、銀行取引における本人認証や会社登記を海外から実行できるようになります。

 短期的な狙いとしてはスタートアップや起業家の呼び込みがありますが、長期的な視野ではこのようにエストニアは物理的な「領土」から「データ」へとその重心を移しつつあると言えるでしょう。

 個人情報の電子化には、必ずプライバシーの問題がつきまといますが、エストニアでは警察に個人情報へのアクセスを認める代わりに、国民が自らの個人情報への照会を確認し、照会理由を問い合わせることができます。

 このようにオープンな仕組みを採用しつつプライバシーにも配慮した形をとっています。これらの多くの電子サービスはX-Roadというクラウドサービス上に構築されていましたが、近年では多くのブロックチェーンスタートアップとの提携を進めています。

 そのひとつが前述したビットネーション(Bitnation)です。2015年にはe-レジデンシーがブロックチェーン上で運用されるようになり、公証サービスとしてさらなるコスト削減を実現しました。

 エストニアは、国民データを中心として国家というものを再定義しているといえる、非常に面白いケースでしょう。

 

  (『ブロックチェーン入門』より構成)