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日本の介護事業には本人の自由がない。オランダに学べ。

第9回 最強の地域医療

日本の介護事業には食い違いがあった

 従来の日本の訪問介護というのは、病院と同じようなシステムで、介護ステーションの都合でサービスを提供します。

 例えば「入浴は火曜と水曜」「食事は1日3回で夕食は午後5時から」「散歩は月2回」とかいうのを聞いていると「大きなお世話!」と思いませんか?

 普段の生活に近い形というのは、入りたい日に風呂に入る、食事は1日2回でいい、散歩は天気のいい日に行く、などというものです。それを可能にするために24時間体制で利用者本人と話し合って、必要な介護を入れるのが定期巡回・随時対応型の特徴です。

 もちろんすべて本人の意向に沿うわけではなく、採算も考えて本人と調整してサービスを提供しますが、大切なのは「利用者に必要なニーズ」と「本人の希望」は必ずしも一致していないということです。その辺の見極めや本人への説明も含めてノウハウが必要だと思います。

 実際今の日本の現状では、例えば介護予防事業では生活援助が93%で身体介護が7%といった状態で、さらに生活援助の70%くらいが掃除でした。

 身体の機能が落ちた人が自宅で生活できるように身体介護をするのが、介護予防の目的です。トイレや入浴を手伝ったり、リハビリをしたり、口腔ケアやフットケアで機能回復を図るというのが介護予防です。

 いくら掃除や洗濯・料理をしても本人の機能を低下させるだけで、介護予防にはなりません。民間業者の仕事を奪って介護保険でやっているだけです。この結果を見ると日本にケアマネージャーは必要ないとさえ思えます。

 ただのお手盛りをやるくらいなら、民間業者が掃除や洗濯、配食サービスをしたほうが地元の雇用が生まれます。

 私たちは夕張で日本でも数少ない過疎地での定期巡回・随時対応型訪問介護ステーションを運営していました。つまり数少ないコミュニティ・ケア=日本型ビュートゾルフです。

 許認可が下りている所は他にも沢山あるのですが、おそらく実際に採算ベースに乗る運営をしている事業所は少ないと思います。このノウハウは多くの地域のために提供していきたいです。

 夕張の事業で最も大切なことは、高齢化率47%と日本一高齢化した市で、地元の人たちがケア産業で起業して、納税して、8人の雇用を生んでいるということです。夕張の再生というのは、昔のように国から税金をたかることではなく、地元住民が事業を運営するということです。

 今後国の方針として、あまりお金がかからずに雇用を生み、高齢化に対応できるこのサービスは進められていくと予想されます。

(『最強の地域医療』より構成)

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村上 智彦

むらかみ ともひこ

1961年、北海道生まれ。医師。北海道薬科大学卒業。薬剤師免許取得、臨床検査技師免許取得、北海道薬科大学大学院薬学研究科修士課程修了。金沢医科大学医学部卒業。2006年から財政破綻した夕張市の医療再生に取り組む。専門分野は地域医療、予防医学、地域包括ケア。2009年、若月賞受賞。2012年、8月にささえる医療クリニック開設。2013年、4月に医療法人ささえる医療研究所「ささえるクリニック」を立ち上げ、理事長として岩見沢・栗山・ゆに・旭川周辺をささえている。2015年12月に急性白血病を発症、再発を経て2017年2月に退院。著書に『医療にたかるな』(新潮新書)、最新刊に『最強の地域医療』(ベスト新書)がある。


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  • 2017.04.08