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“エディー改革”で強さを取り戻したイングランド。オールブラックスを王座から引きずり下ろす時

テストマッチ18連勝。ラグビーの母国のプライドを取り戻した。そこにあったエディー・ジョーンズの流儀

けが人続出でも揺るがない分厚い選手層

 就任2年目となる今年のシックス・ネーションズは、FWマコ・ヴニポラ、LOジョージ・クルーズ、FLロブショウ、NO8ヴニポラらFWの主力が故障で欠場を余儀なくされた状態で臨まなければならず苦戦も予想されていた。

 ただ前述の通り、昨年11月のテストマッチでも、実際は主力選手を多くケガで欠いていたため、常に2019年ワールドカップを意識しているエディーは「こういう時は他の選手がチャンスをもらえる」と前向きにとらえていた。

 昨年の11月は全試合をホームのトゥイッケナムで戦ったこともあり、トレーニングにはプレミアシップでプレーする選手を常時50人前後招集して競わせ、今年のシックス・ネーションズでも同様に積極的にトレーニングに選手を集めた。こうした層の厚さに上手く競争意識を与えて、負傷者が多いという危機を乗り切っていった。 

 今年のシックス・ネーションズでは、ヴニポラに代わりネイサン・ヒューズがその穴をしっかりと埋め、もともと層の厚かったLOやFLにはコートニー・ローズやジョー・ローンチベリーといったワールドカップ出場組が気を吐いた。さらに選手層の厚さに加え、「粘り」も出てきた。昨年11月のアルゼンチン代表戦の序盤からレッドカードをもらい、14人でプレーしなければならない逆境に立った際でも、落ち着いて勝利をものにした粘り強さは、今年のフランス戦、ウェールズ戦でもよく現れており、エディーは「選手たちは決して諦めない気持ちを持っている」と満足げに語っていた。

 加えて、やはりエディーの強みは采配の妙、交代選手の投入タイミングはさすがである。去年秋のテストマッチでも、今年のシックス・ネーションズでも、CTBベン・テオやSHダニー・ケアなど、交代選手が期待通りの活躍を見せたことで、いくつも逆転勝利に成功している。エディーは快勝よりも厳しい試合の時の方が、「自分の選んだこの試合のための23名が正しかった」と喜びを隠さない。

全ては2019年ワールドカップ優勝のために。まだ道の途中

 選手の層を厚くし、モチベーションを上げ、そしてチャンスを与えて絶妙なタイミングでベンチメンバーを起用する。これこそがエディー・イングランドの快進撃の大きな要因となっている。

 あくまでもエディー、そしてイングランドのゴールは2019年ワールドカップで優勝して世界一になるという思いはまったくぶれない。シックス・ネーションズの最終戦で破れた時、史上初のシックス・ネーションズでの全勝で2連覇、テストマッチ連勝記録の更新の19連勝が叶わなかったことは、その道の途上であって、エディーにとっては大きな問題ではない。

 敗戦後の会見でも「どのチームも昨年より強くなっている。その中で今年も優勝できたことは去年よりも価値がある」とエディーは語った。キャプテンのハートリーも「この敗戦は学ぶことが大きい」と前向きで、エディー選手も同じ目標を見据えていることがよくわかる。

 今年はブリティッシュ&アイリッシュライオンズのツアーがあることもあり、イングランドとオールブラックスとの対戦はまだ先になりそうだが、エディーは最終目標に向けて、今シーズンも着実に自身の考えているプランを遂行していくはずだ。

 2019年にどのチームより強くなる――エディーの確固たる思い、覚悟は変わらない。

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斉藤 健仁

さいとう けんじ

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365 」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。


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