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「都会にはできない医療」が地方の消滅を救う

第3回 最強の地域医療

周南市という優れたまち

 先日、山口県周南市という、夕張とは正反対の素晴らしい地域に出会うことができました。

 周南市は地域が合併した人口147,000人の地域ですが、今後の人口減・高齢化は避けられません。2040年には高齢化率40%近くになる見通しの、言ってしまえば日本の平均的な都市です。

 ただ、今後のまちづくりに医療介護を使うために、市長、議員さん、行政職員が熱心に取り組む姿勢が見られました。民意の高いまちは、意識の高い首長さんや議員さんを選ぶものです。

 今のところはまだ高齢化にも余裕のある地域なのですが、これからの行く末を考えて、周南市の地域医療を守る条例まで制定しています。

第4条 市が安心した体制を作る責任

第5条 市民はかかりつけ医、かかりつけ薬局を持ち、健康意識を高める義務

 

 医療介護を使ったまちづくりは、都会にはできない医療だと思います。地方の人口数万~30万くらいの都市だからこそできる医療だと思います。

 住民意識の高い周南市が先頭を走る地方になって、数十年後には「地方は消滅しない」ことを証明してくれるのではないでしょうか。

 佐久総合病院の若月俊一先生は「医療は文化である」と言っています。

「よそ者」「若者」「馬鹿者」のよい医療者が、地域に入って地域医療を行っていくことで、その地域の文化が変わっていきます。この「文化」を変える地域医療は、都会ではすぐにはできません。つながりや地域・社会のありようを変えることで健康を獲得し、地方の消滅も防ぐことができるのです。

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永森 克志

ながもり かつし

昭和47年、富山県生まれ。慈恵医大を卒業し、村上智彦医師とともに夕張医療再生に取り組む。その後、隣町の栗山町で夕張郡訪問クリニックの院長として、2013年に医療法人社団ささえる医療研究所「ささえるクリニック」を立ち上げ、岩見沢・栗山・ゆに・旭川周辺をささえている。


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