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驚きの20代の感性!「コンビニがどう変わればウケる?」

【続・コンビニが日本から消えたなら 渡辺広明×原田曜平先生×大学生研究員でガチ対談③】

■「体感美味しい」の実現と「コスト高」の折り合いをどこでつけるのか?

 相馬:そして、一番伝えたいのは、パンに関することですね。ビニール袋に入っていて棚に陳列されているのを見ても、美味しそうに感じることがないんです。でも、ナチュラルローソンだと包装されていないパンが、パン屋さんのように棚に陳列されていることがあって。それを見ると「美味しそうだな」と感じるので、他の店舗でも取り入れてほしいなと思います。もちろん、新型コロナの影響が去って本来の日常生活が戻ってきてからの願いですが。

 渡辺:工場で作ったパンを冷凍して納品して、店内でひと手間かけて展開しているんだよね。美味しく感じでもらえるのは大切なこと。でもこのひと手間のコストと売上の費用対効果のバランス次第だね。

 相馬:そこまでは知らなかったけど、雰囲気で美味しそうって買っちゃいますね。

 原田体感、美味しそう。が重要。

 渡辺:だから、売り場の雰囲気とか、そういう面まで全部ひっくるめて、買うって衝動につながっていくということなんだよね。なので、各チェーンのコーポレートカラーには、明確な戦略があるんですよ。

 一同:え~っ? 知りませんでした。そうなんですね。

  

■驚き! イヤホンとセルフレジの関連。そして汎用性が高いローソンレジの秘密とは?

 相馬:最後のお願いは、セルフレジをもっと増やしてほしいということです。

 原田:それはなぜ?

 相馬:今、若者は大概イヤホンして街で歩いているんですけど、有人レジだと、イヤホン外してスタッフさんと会話しなくちゃいけないですよね。たまに、「外すの面倒くさいな」って思うことがあるんですよ。イヤホンしたまま無言でセルフレジで済ませた方が、自分のスタイルで買い物ができるんですけど。そんな空間があればいいなぁ、と思います。

 渡辺:声もかけられたくない?

 相馬:そうですね。「外では極力知らない人とは会話したくない」っていう私の性格からなのかもしれないですけど。

 渡辺:みんなコンビニで声をかけられたくない?

 一同:イヤです。

 相馬:そういう意味で、もっと増やしてほしい機能だなと思います。

 渡辺:おじいちゃん、おばあちゃんは、声かけてほしいらしいんですよ。

  

 Column 渡辺広明氏著『コンビニが日本から消えたなら』より抜粋


 コンビニを高齢者の集会場にする

 当然ながら、主力客となった高齢者を無視することはできません。 詳しくは後述しますが「宅配サービス」や「過疎地域への進出」など、すでに高齢者を意識した取り組みを開始しています。 買いやすい環境を用意することは、経済を活性化する1つの方法です。いまの高齢者が受け取る年金額は、新入社員の給与よりも高いというケースも少なくありません。それならば、高齢者でも購入しやすい環境を整え、消費を促すようなリズムを構築していくべきなのです。

 コンビニの品揃えに関しても、今後は高齢者が好むものが増えていくでしょう。 その上で注意すべきは、ポスト高齢者の50代です。実はいまの60代と50代の間には 大きな隔たりがあります。いまの60代は、コンビニの品揃えに対して素直に感心してくれる人が多いのです。

 しかし、いまの50代は違います。小売業の歴史でも説明しましたが、コンビニは 1980年代後半から若者とともに成長してきました。このときの若者がいまの50代なのです。長年、コンビニに親しんできた彼らはコンビニを見る目が肥えています。 知恵を絞っていかないと、満足してもらえない。これは大きな課題です。

 一方、品揃え以外で重視すべきは接客です。しかも、これまでコンビニが苦手としてきた〝コミュニケーションを交えた接客〟です。 今後、セルフレジの導入が進めば、多くのお客様はそちらに流れていくでしょう。 しかし、最後まで有人レジに並ぶのは高齢者です。若者に比べてキャッシュレスに移行しづらいという理由もありますが、それ以上に彼らは会話を求めているのです。

 単身高齢者が日常的に人と交流できる場所として、コンビニは最適なのです。老人会などの集まりが毎日あるわけではないし、仮にあったとしても、入っていけない孤独な高齢者も増えていくはずです。だからこそ、気軽に人と触れ合える場所をコンビニが提供するのです。高齢者の集会場の役目を果たすのです。そうなると、 イートインコーナーはコンビニの標準設備になるかもしれません。 集会場の提供は、高齢者のみのメリットではありません。これは、主力客を獲得するための集客戦術です。接客で多くの高齢者を呼び込むことができれば、販売拡大につながるのです。


  

 相馬:そうですよね。スーパーとかで見ているとそうだなと思います。

 渡辺:セルフレジはこれから増えてくると思うんで大丈夫だと思いますよ。実は、ローソンのレジは、お客さま側に向きを変えるとすべてセルフレジになるのです。

  

 Column 渡辺広明氏著『コンビニが日本から消えたなら』より抜粋


 セルフレジの導入で、接客の価値を高める

 この命題は、セルフレジの導入と相反するように思えるかもしれませんが、これは大きな間違いです。

 コンビニに来るお客様は「淡々と会計してくれる事務的な接客を求めるタイプ」と「密なコミュニケーションを求めるタイプ」の2通りなのです。 前者のお客様は、セルフレジを導入すればそちらに流れる可能性が高い。しかし、 後者のお客様は、高い確率で有人レジに並びます。とくに、超高齢社会を迎えたことで、そうした接客を望む高齢者が増えていくはずです。そこで、セルフレジの導入によって生まれた時間的余裕を、より丁寧な接客を行う時間に充てるのです。


 第4回へ続く

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渡辺 広明

わたなべ ひろあき

日本一のコンビニ流通アナリスト

静岡県浜松市出身。東洋大学法学部経営法学科卒業。 マーケティングアナリスト、流通アナリスト、 コンビニジャーナリスト。 静岡県浜松市の親善大使『やらまいか大使』。 (株)ローソンにて店長・スーパーバイザー・バイヤーとして 22年勤務。約730品の商品開発にも携わる。 ポーラ・オルビスグループ(株)pdc勤務、TBCグループ(株)で 商品営業開発・コラボ企画・海外業務を歴任後、 (株)やらまいかマーケティング 代表取締役社長に。 フジテレビ『Live News α』『ホンマでっか!?TV』での コメンテーターをはじめ、 『東京スポーツ』『デイリースポーツ』『オトナンサー』 『商業界ONLINE』にて連載を持つなど、 多種多様なメディアで活躍中。


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  • 渡辺広明
  • 2019.12.27