戦う医療から、ささえる医療へ

「年寄りに戦う医療はあまり必要ない」と言うと、「年寄りに早く死ねと言うのか」と抗議されそうですが、そうではありません。ちょっと考えたら誰でもわかることです。人間の死亡率は100%なのです。

「お年寄りは若い人よりだいたい早く死にます。高齢者にとって病気を治す専門医療は効果が低いだけでなく、苦しみを与えることになる」と言っているだけです。むしろ本人に寄り添い、介護看護に寄り添う医療によって、幸せに死んでいけるのだと思います。

 それが、私が10年前に村上智彦医師とともに夕張ではじめた「ささえる医療」なのです。

 ささえる医療では、予防ケアや在宅ケアを重視します。そうすれば、社会的なおカネ(=医療費)が軽減されるし、ケアを受ける人にとっても「被害」が少なくて済む。入院したとしても、できるだけ早く大好きな家に帰して、往診で医者と看護師が支えていけばいい。

 ただ、それは医者と看護師だけではできません。患者本人と家族の覚悟、愛着に加えて、地域のケア職、色んな職種の人たちの力も借りることになります。それがささえる医療の本質です。

 私たちは住民が看護師や介護士の資格を取って起業し、訪問看護介護ステーションを立ち上げる後押しをしました。やってもらうのを待つのではなく、自分たちで動くようにしました。

 村上智彦医師が夕張での在職5年間でささえる医療を行ったところ、医療費は激減した一方で、死亡率は下がり、平均寿命も延びているか変わっていません。

 これは、男女とも平均寿命が日本一になった長野県のやり方を取り入れたものです。長野県の病院数は少ない方でしたが、住民の検診の受診率をあげ、早期発見早期予防を心がけ、健康に対する意識を押し上げることに成功しました。

 

 これから日本では、大都市と周辺での高齢化問題が持ち上がることになります。総人口が多いので当然ですが、地方よりも圧倒的に多くの高齢者を抱えていきます。そのような状況では、日本中の医者、看護師を集めたところで、今までの医療を維持することはできません。日本の財政も医療費負担に耐えられません。

 これまでとは違う仕組み、つまり「ささえる医療」が必要になるのです。

 夕張は「2050年の日本の縮図」です。村上医師は日本を先取りする取り組みを行ってきたと言えるでしょう。

「戦う医療」から「ささえる医療」に転換し、住民は地域に対して覚悟と愛着を持って自立していくべきです。それこそが「最強の地域医療」であり、そのときに夕張の医療は形を変えて、再生する方向に歩んでいけるでしょう。