【取調室取引24時‼️】「お笑い拳銃捕物帳」これが元ヤクザvs日の丸桜田一家の交渉舞台裏だ! |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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【取調室取引24時‼️】「お笑い拳銃捕物帳」これが元ヤクザvs日の丸桜田一家の交渉舞台裏だ!

【塀の中はワンダーランドVol.7】取引だ、拳銃出せ!

◼️5丁と半分の拳銃無宿

そんなことからボクは当日、駆け引きに出て、ポリ容器に入れた他人のション便をタウルス一丁で買ったのだ。そのあと、尿から覚せい剤の陽性反応が出なかったこと(他人のション便だから当たり前だ)と、捜査協力ということではあるが、実にタイミングよく拳銃一丁が挙がってきたことから、検事は何やらきな臭いものを感じ取り、違法な裏取引があったのではないかと怪しんだのも当然だった。しかし、それ以上は追及してこなかった。デカたちも刑事生命を懸けているので必死だったのだ。

この1500万円の恐喝未遂事件で、ボクは被害者を追い込んだときに馬乗りになって、その首根っこを押さえ、ボールペンで目を突こうとしたことがあったが、どうにか脅迫に落ちて、罰金刑で釈放されたのだった。

それはそうだ。四課のマル暴に、「死んでいった兄ィの持ち物だから」と言って、最高の物を提供したのだから……。ボクと一緒に逮捕状の出ていた弟分二人も、ただ事情を聞かれただけですんだ。

そして最後の1丁。ボクはある若い衆を日本刀の鞘でぶん殴った件で、弟分の南原と一緒にM署の捜査四課にパクられたことがあった。間の悪いことにこのとき、生活安全課代理のFの、犯罪を嗅ぎ分ける鋭い嗅覚によって、またもや覚せい剤か何かの別件が浮上して事件になりかけていたのだ。さらに、八王子署の銃器薬物班からも、拳銃2丁の捜査の件で問い合わせがあった。

ある日、Fに留置場から引っ張り出されたボクは生活安全課の取調室で、「このままじゃ、H署に身柄を持って行かれるな。オレが身柄を持っていかれないよう、向こう(H署)とも巧く話をつけてやるよ。それにこっちの件も巧くやってやるから一丁出せよ。ジンちゃん」と、例のごとく弱みにつけ込まれて一丁出す破目になってしまった。

FはH署の銃器薬物班に対して、プラスチック製の玩具の拳銃に黒くペンキを塗った物を、「情報提供者が見たのはこれだよ」と言って、その玩具の拳銃でチャラにしてしまった。

半年近くもボクのことを内偵していた結果が「玩具の拳銃一丁」というお粗末なことになったことから、八王子署の銃器薬物班のS係長は切歯扼腕し、情けなく悔しい思いをしたはずである。

しかし、人の縁とは不思議なもので、それからしばらく経って、ボクは知り合いの小平学園にある「R」のマスターから電話をもらった。その内容は「H署銃器薬物班のS係長から、是非とも会いたいからセッティングしてくれないかと頼まれた」ということだった。H署の係長の住まいが小平にあることから、「R」のマスターは知り合いだったようだ。当時、このマスターは某組織の現役のヤクザだった。

◼️ヤクザ流「核抑止論」--治安維持「逆説」としての拳銃

  

しばらくして、ボクは「R」でH署のS係長と会ったが、このとき拳銃2丁の件を訊かれたのだ。

「ジンさん、もうすんだことですけど、本当は拳銃あったんじゃないですか? 僕は間違いなくあったと確信しています。ジンさん、本当のこと教えてくれませんか」

まるで胸のつかえを降ろすかのように訊かれたボクは、飲みかけたままのラムコークのグラスをそのままにして立ち上がった。

「そんなもの、始めからありませんよ」

ニヤリと、意味ありげな笑いを顔に貼りつけたまま、そのとき一緒にいた奥さんと、まだ歩き始めたばかりのユキテルの手を引いて帰ってきた。

こんな具合で、合計5丁と半分だったのだ。

拳銃1丁で懲役が助かれば、安いものである。拳銃は人を殺す道具ではあるが、また人を助けるための道具としても使えたのである。ボクはこれまで、このようにして何回も、落ちそうになったクソ溜めの獄の壁をよじ登り、危機を脱してきたのだ。

『ヤクザとキリスト〜塀の中はワンダーランド〜つづく)

  

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 2020年5月27日『塀の中のワンダーランド』
全国書店にて発売!

 新規連載がはじまりました!《元》ヤクザでキリスト教徒《現》建設現場の「墨出し職人」さかはらじんの《生き直し》人生録。「セーラー服と機関銃」ではありません!「塀の中の懲りない面々」ではありません!!「塀の中」滞在時間としては人生の約3分の1。ハンパなく、スケールが大きいかもしれません。

 絶望もがむしゃらに突き抜けた時、見えた希望の光!

 「ヤクザとキリスト〜塀の中はワンダーランド〜」です。

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さかはら じん

さかはら じん

1954年生まれ(本名:坂原仁基)、魚座・O型。埼玉県本庄市生まれの東京育ち。幼年 期に母を亡くし、兄と二人の生活で極度の貧困のため小学校1カ月で中退。8歳で父親に 引き取られるも、10歳で継母と決裂。素行の悪さから教護院へ。17歳で傷害・窃盗事件を 起こし横浜・練馬鑑別所。20歳で渡米。ニューヨークのステーキハウスで修行。帰国後、 22歳で覚せい剤所持で逮捕。23歳で父親への積年の恨みから殺害を実行するが、失敗。 銃刀法、覚せい剤使用で中野・府中刑務所でデビューを飾る。28歳出所後、再び覚せい剤 使用で府中刑務所に逆戻り。29歳、本格的にヤクザ道へ突入。以後、府中・新潟・帯広・神戸・ 札幌刑務所の常連として累計20年の「監獄」暮らし。人生54年目、獄中で自分の人生と向き合う不思議な啓示を受け、出所後、キリスト教の教えと出逢う。回心なのか、自分の生き方を悔い改める体験を受ける。現在、ヤクザな生き方を離れ、建築現場の墨出し職人として働く。人は非常事態に弱い。でもボクはその非常事態の中で生き抜いてきた。

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  • さかはらじん
  • 2020.05.27