ユダヤ商法に〝あいまいさ〟は厳禁。だからいつでもどこでもメモをとる。
復刊がベストセラー『ユダヤの商法』より #3
ビジネスの基本である「メモ」が再注目されている。2010年代には、SHOWROOM創業者の前田裕二氏の『メモの魔力』(幻冬舎)もベストセラーになった。そして遡ること1972年初版の『ユダヤの商法』(KKベストセラーズ)にも、ユダヤ人の尋常ならざるメモの習慣が日本マクドナルド創業者の藤田田を介して記されている。新装版として復刊した同書より紹介する。(「ユダヤの商法」シリーズ#3 / #1 #2 を読む)
■いつでもどこでもタバコの空き箱にメモを取る
ユダヤ人は、重要なことは、どんな場所ででも、必ずメモを取る。このメモが、彼らの判断の正確さにどれほど役立っているか分からない。
メモを取る、といっても、ユダヤ人はいつもメモ帳を片手に歩いているのではない。ユダヤ人のメモ帳はタバコの空き箱を代用したものである。ユダヤ人は、タバコを買うと、中身はすぐにシガレットケースに移しかえるが、空き箱は捨てずにポケットへ入れておく。たまたま、商談などで、記録が必要になった時は、この空き箱を取り出して、その裏側にメモを取る。このメモは、あとでメモ帳に整理して記録される。タバコの空箱にメモを取ることで、ユダヤ人はユダヤ商法に〝あいまいさ〟が生じることを許さないのだ。迅速に的確に判断を下しても、肝心の日時、金額、納期などがあいまいであっては、なんにもならないからだ。
日本人は、重要なことを聞き流し、うろ覚えのままですましてしまう悪癖がある。
「あの時の話では、納期は確か○月○日だったでしょう。それとも×日でしたかな」
そう言って平然としている。時には、わざとあいまいさをおトボケに利用する。しかし、相手がユダヤ人では通用しない。
「あ、思い違いでした。△日でしたね。私はてっきり○日だと思っていたものですから」
などと弁解してもすでに手遅れ。契約破棄、債務不履行にかかわる損害賠償請求──といった方向へ事態が進展しないとも限らない。
ユダヤ商法には、あいまいさはないし、思い違いもないのである。ちょっとしたことでも、面倒がらずにメモを取るべきである。
〈『ユダヤの商法』より構成〉