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WBCで日本野球の存在感を示す。巨体に似合わぬ人見知りの「日本印」が活躍中

メキシコ代表で活躍する楽天・アマダー。その他、NPB在籍外国人選手活躍中

勝利への意欲が誰より強い選手

 メキシコにも変化球投手は多い。だが、日本人投手はひとりあたりの球種が豊富で、タテの変化球ひとつとってもスライダーとフォーク、チェンジアップなど複数使い分ける。何より、制球力が群を抜いている。打席に立つことができないアマダーは、映像で多くの投手を研究し、復帰後の爆発を誓った。

 そして、それは実現した。

 7月に復帰すると、頭と体の連動性が円滑に機能しだす。8月には8本塁打。楽天は月間最多本塁打の新記録を樹立し、パ・リーグトップの15勝を挙げた。アマダーの豪打が、チームの勝利を数多く手繰り寄せたわけだ。彼はこう手ごたえを口にした。

「やっぱり、日本の野球に慣れてきたことが、好調の一番の理由だと思っている。チームメートがそうであるように、私も試合前には登板予定のピッチャーのビデオを見て研究したり、準備はちゃんとしている。だから、試合でいいパフォーマンスを出せたんだ」

 その巨体から想像しづらいかもしれないが、実は人見知りである。しかし、ひとたび打ち解ければ忠誠を誓う男でもある。楽天は昨季、9月まで3位ロッテとクライマックスシリーズの出場を争っていたが、結果的に5位でシーズンを終えた。アマダーは、自身の成績以上にそのことを悔しがっていたものだ。

 勝利への意欲。それが今、メキシコ代表に注がれている。海外選手は、日本人と同じくらい、もしかしたらそれ以上のナショナリズムがある。アマダーの理念はこうだ。

「私はホームランや、その飛距離を周りから期待されているのかもしれないが、個人的にはあまり気にしてはいないんだ。一番の喜びはチームが勝つこと。自分が打っても負けてしまったら嬉しくないからね」

 祖国は違う。だが、日本でプレーしている海外の選手がWBCで活躍すれば、日本のファンも誇らしさを感じるはずである。

 メキシコ代表なら、アマダーのほか日本ハムのブランドン・レアードとルイス・メンドーサ、巨人のルイス・クルーズがいる。2次ラウンドで日本と戦うオランダには、ヤクルトのウラディミール・バレンティンとソフトバンクのリック・バンデンハーク。キューバにも、今年からソフトバンクでプレーするアルフレド・デスパイネがチームの中心として打棒を振るう。彼らは皆、国の威信を背負い、世界一を目指し全身全霊を傾ける。

「日本印」の海外選手は、侍ジャパンにとって脅威となる存在である。だが、そうでなければ困る。日本のレベルの高さを世界に誇示するためには、彼らの爆発は不可欠なのだ。

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田口 元義

たぐち げんき

1977年福島県生まれ。元高校球児(3年間補欠)。ライフスタイル誌の編集を経て2003年にフリーとなる。Numberほか雑誌を中心に活動。試合やインタビューを通じてアスリートの魂(ソウル)を感じられる瞬間がたまらない。現在は福島県・聖光学院野球部に注目、取材を続ける。


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