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日本人の英会話が苦手な理由は、あることが「信じられない」から。

「最小限主義の心理学」不定期連載第14回

アニメを字幕なしの外国語で観ると、推測できる

 実は、フランス語のアニメを観始めたのはつい数日前。まだ初めて数回だ。

でも、自分がフランス語という未知の世界に入ってみて、すぐにわかった。

 子どものアニメを字幕なしの外国語で観ると、推測できる。「正しい答え」ではなくても、なんとなく意味を把握できる。

 それに、通常であれば本で勉強した単語がそのアニメに出てくるかどうか、聴き取りができるかどうか注意して聴くはずだが、そもそも聞こえたものから推測していくので、次に聴いたときに聴き取りができないはずがない。100%できる。

 発音が絶対的に正しいかはわからない。でも、聞こえたとおり発音するだけだ。私は信じることができた。「推測」で言語を習得していく方法を。なるほど、娘はこうやって1歳ごろから推測を繰り返してきたのか。

 そう感心していると、英語にもすぐに変化が出てきた。自信が出たのか、前よりももっと素直に英語の音だけを聴けるようになってきた。 

 いちいち訳すために立ち止まったり、「聴き取りができるかどうか」という姿勢で英語を聴かない。ただ、今発音されている音を、フランス語を聴くときのように聴ける。

「聴いて、推測する」という順序を守れるのだ。

 どうしてそんな変化が訪れたのか。それは、私がこの方法を「信じた」からとしか言いようがない。

 ペンとノートを捨てることに躊躇することなく、一番単純な方法論を信じることができたのだ。

 とは言っても、長い間英語を勉強していた私には、それが信じられない心理がよくわかる。どんなにここで私が主張しても、心から信じることなんてできないのだ。

 信じられないうえに、近道はもっとある。スマホで辞書をすぐ使えるし、翻訳アプリもある。文法の仕組みも知りたいし、音を聴けばスペルが知りたくなる。

「スペルは大事だし、文法は大事だし、日本語に正しく訳すことは大事だ」 と、普通ならやはり思ってしまう。仕方がない。

「アニメを観て、音を聴いて、推測して、英語がペラペラになる」

 なんて、誰も信じられない。

「勉強しない」で覚えるなんて、信じることができないのだ。

 誰もが「推測」で、「できるわけがない」「変な英語になるだろう」と考える。

 そんな、信じがたい方法をできることができるのは、疑わずにそれをただ実行する子どもと、ただ信じる大人だけなのかもしれない。

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沼畑 直樹

ぬまはた なおき

ミニマリスト。テーブルマガジンズ代表。元バックパッカー。

2013年、「ミニマリズム」「ミニマリスト」についての記事を発表し、佐々木典士氏とともにブログサイト≪ミニマル&イズム(minimalism.jp)≫をたち上げる。 著書は、小説『ハテナシ』、写真集『ジヴェリ』『パールロード』(Rem York Maash Haas名義)など。


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