■「筒香に任せておけば大丈夫」

 もしかしたら、それは意図的に行われていた打撃なのかもしれない。一流打者にもなれば、自分の現状を細かく把握できているものだ。例えば、左打者で言う右肩の開きが早いと感じれば、逆方向へ打球を打つことでその状況を修正する。ただ、それはいわば調整だ。本戦を間近に控えた今、すべきことではない。
 チーム打撃を心がけているとしても、それこそ筒香に求められている打撃ではない。
 侍ジャパンは、文字通り日本トップクラスの選手の集まりである。3月3日の阪神との強化試合で、アストロズの青木宣親が8回、無死一、二塁でセカンドへ進塁打を放ったように、ケース打撃、チーム打撃をこなせる選手は数多くいるからだ。
 筒香が打席でやらなければならないことはただひとつ。打球方向に関わらず、力強いスイングで長打を連発することである。確かに、日の丸を背負う重圧、覇権奪還という至上命題のために、フォア・ザ・チームの精神で試合に臨むことは尊いことではある。
 だが、打撃スタイルとは一朝一夕で変えられるものではない。第1回から2大会連続でWBCに出場し連覇に貢献した、阪神の福留孝介が語っていた理念こそ、今の筒香に最も当てはまるのではないだろうか。

 「いくら国際大会だからと言っても、特別なことができるわけじゃない。日の丸のユニフォームを着たからすごいプレーができるわけではないんですね。気持ちだけが先走ってプレッシャーになるだけですから。だから僕は、普段通りのプレーを心がけていました」
 強化試合が終わり、小久保監督は改めて「4番は筒香」と明言している。プレッシャーはあるだろう。だが、筒香自身、重責を担えることに昂揚感を抱いているはずである。「4番候補」として将来を嘱望されていた若手時代、彼ははっきりとこう言っていた。
「『筒香に任せておけば大丈夫』と、頼られるようなバッターになりたい」
 所属チームでは絶対的な地位を確立した。あとは、侍ジャパンで結果を残すのみ。横浜の空に豪快なアーチを描くように、日本の主砲としてWBCでも華麗な花火を打ち上げる筒香の打撃を、ファンは待ち望んでいる。