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21世紀はフィリピンの時代になる

韓国と台湾を足しても届かない総人口。成長著しいフィリピンがアジア経済の牽引役となる。

真の意味で「自由と民主主義」根付く国

 それに比してフィリピンにはすでに「自由と民主主義」が確立されている。ドゥテルテの登場でフィリピンでは恐怖政治がまかり通っている、と勘違いしている人もいるが、実際にその疑念はフィリピンに行けば雲散霧消する。戒厳令を敷いたマルコス時代とは違い、現在のフィリピンには言論統制や監視社会は存在しない。ドゥテルテを恐れてメディアが政府批判をしないのではない。

 ドゥテルテの政策がフィリピンの構造的病巣、つまり薬物汚染・犯罪・汚職を根治するものと評価しているからこそ批判の声を聴かないのである。いまフィリピンは構造改革の真っ最中なのだ。

「自由と民主主義、という共通の価値観を持つ…」という手あかのついた美辞麗句で、アメリカや韓国や台湾、オーストラリアを呼ぶことがままある。台湾や韓国や豪州は兎も角とても、狂気の大統領令を連発するトランプを元首に選んだアメリカが「自由と民主主義、という共通の価値観を持つ」とは私は言えないと思う。

 真の意味で「自由と民主主義」が根付いているのは、フィリピンであろう。フィリピン人は1986年、親米独裁政権であったマルコスを自力で倒し、台湾や韓国よりも早く「民主化」を達成した。フィリピンの民主主義は米西戦争(1898年)以降のアメリカ当地時代にアメリカから与えられたものだが、とはいえ或る意味、「自由と民主主義」については日本よりもフィリピンのほうが先輩なのかもしれない。なぜならフィリピンは16世紀から始まったスペインの都合300年以上にわたる植民地支配に抵抗し続け、アジアの中でだれよりも自由を渇望してきた国だからだ。そして、自力でそれを達成した国でもある。
「21世紀はアジアの時代」というかつての夢想は、この地域の経済発展が「自由と民主主義」の広範な普及を促すこととセットだった。

 しかし前述したように、現下の中国の情勢を鑑みれば、その夢想はやはり夢であったと言わざるを得ない。第二の天安門が起こるような騒然とした空気は今の中国にはない(―しかしながら未だに中国が分裂するという妄想に取りつかれている”反中”を生業にする人々は、毎年中国が崩壊する、と言ってきかないのである)。

 しかしその「21世紀はアジアの時代」というかつての夢想に当てはまることのできる国こそ、フィリピンであると考える。既に「自由と民主主義」の条件が整ったフィリピンは、日本に伍する自由主義の大国になる素地が揃っている。「21世紀はアジアの時代」とは、「21世紀はフィリピンの時代」と呼び変えても差し支えないように私には思えてならない。

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古谷 経衡

ふるや つねひら

評論家、著述家。1982年北海道札幌市生まれ。立命館大学文学部史学科卒。インターネットと「保守」、メディア問題、アニメ評論など多岐にわたって評論、執筆活動を行っている。主な著作に、『知られざる台湾の「反韓」』(PHP研究所)、『もう、無韓心でいい』(ワック)、『反日メディアの正体』『欲望のすすめ』(小社)など。

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