譲位したら、天皇陛下はどこに住まれるのか? |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

譲位したら、天皇陛下はどこに住まれるのか?

象徴天皇「高齢譲位」の真相

葉山御用邸、いっそ京都もあり?

 このように三案とも一長一短ですから、ほかに東京都外まで視野に入れますと、関東圏内に皇室の御用邸が三ヶ所あります。ひとつは神奈川県三浦郡葉山町の「葉山御用邸」、もうひとつは栃木県那須郡那須町の「那須御用邸」、いま一つは静岡県下田市須崎の「須崎御用邸」です。
 このうち、葉山御用邸は、明治時代に孝明天皇の皇后だった英照皇太后の避寒地として設けられ、大正天皇がよく逗留されて、ここで崩御されましたから、昭和天皇はここの付属邸で践祚しておられます。本邸は昭和46年(1971)放火のため焼失しましたが、十年後立派に再建されており、今の両陛下も活用しておられます。

 また、須崎御用邸は、昭和四十四年に沼津の御用邸が廃止された後、元三井家の別邸を拡充して二年後に新築されました。葉山と共に太平洋を一望できる景勝地にあり、改修すれば上皇御所としてふさわしいかと思われます。ただ、両方とも東京から少し離れており(那須も同様)、また新天皇が御用邸としても使われますし、何より警備などが難しいと思われます。
 そうであれば、いっそ千年以上「宮処」であった京都の御苑にある「大宮御所」(幕末に焼失した仙洞御所の北西部に、英照皇太后のために造営され、現在も天皇・皇后両陛下と皇太子・同妃両殿下の京都御宿泊所となっています)も、一案として検討の余地があるのではないかと思われます。

『象徴天皇「高齢譲位」の真相』より構成)

KEYWORDS:

オススメ記事

所 功

ところ いさお

名古屋大学史学科・同大学院修士課程卒業。法学博士(慶大)。文部省教科書調査官を経て、京都産業大学名誉教授、モラロジー研究所研究主幹。著者に『皇位継承のあり方』(PHP新書)など、共著に『元号』『皇位継承』(ともに文春新書)など、編著に『日本年号史大辞典』(雄山閣)など。


この著者の記事一覧

RELATED BOOKS -関連書籍-

象徴天皇「高齢譲位」の真相 (ベスト新書)
象徴天皇「高齢譲位」の真相 (ベスト新書)
  • 所 功
  • 2017.01.07