◆道筋があるからこそ、自由な発想が出てくる

 さて、ではなぜ問いを四つ設けてまで、段階的に創造的思考を引き出しているのか。それは、受験生ひとり一人が今持っている知識を使えてこそ、自分の考えを持つことができると考えているからです。
 出題者側としては、一番出したい問題は問4なのですから、問1から3を省いてしまうことも可能でしょう。実際、学校の授業やテストなどで、問4のような問題をいきなり出しているケースはよく見られます。しかしこれでは、文章の形式や構成をどうするかという問題にとらわれてしまい、自由な発想ができない生徒もいます。「できる生徒だけが解けば良いのでは?」と思われるかもしれませんが、道筋を示してあげることで、大人があっと驚くような解答をする子どもがたくさんいるのも事実です。

 

 実際、先ほど紹介した入試問題について、受験生の解答用紙を見ましたが、とても個性的な答えがいくつもありました。たとえば、自動販売機でおむつを売ったらいいのでは、と書かれた答案。年下の兄弟がいるのかもしれませんね。お年寄りのために背の低い自動販売機を作ってはどうかという子もいました。それから、時代を象徴しているなと思ったのは、「AIに相談しながら買う物を選べる自動販売機」という案。これには驚かされました。
 やり方さえわかれば、非常に多様な解答が出てくるものです。そのために、出題者側がいかに工夫できるかというのは、重要なポイントだと思われます。

 同じことは、入試問題だけでなく学校の授業などについても言えるでしょう。生徒に自分の考えを表現してほしいというとき、教師は、いきなり作文用紙を渡したりするのではなく、自分の考えをまとめるためのプロセスを提示してあげるべきだと思うのです。 
 それぞれの子どもがそれぞれに自由な発想のできる場を、中学受験のときだけでなく、教育全体でこの先作っていきたいものです。