【脳梗塞の出版局長】半身不随から復活できるのか!?  歴史的酷暑とは無縁の快適リハビリ生活。とはいえ〝立って歩くこと〟が大困難の巻【真柄弘継】連載第4回 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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【脳梗塞の出版局長】半身不随から復活できるのか!?  歴史的酷暑とは無縁の快適リハビリ生活。とはいえ〝立って歩くこと〟が大困難の巻【真柄弘継】連載第4回

【新連載】脳梗塞で半身不随になった出版局長の「 社会復帰までの陽気なリハビリ日記」163日間〈第4回〉

脳梗塞発症前の出版局長・真柄弘継氏

 

脂こってりのステーキや焼肉、パンケーキは一生分どころ二生分は食べた

 

◾️8月20日水曜日

このリハビリテーション病院では、毎年夏に院内でお祭りを催すらしい。

だがコロナ禍以降、去年まで開催できずにいたそうだ。

たまたま夏のこの時期にコロナが流行ったりして、やむなく中止だったそうだ。
今年は実に5年ぶりの開催となった。

言語・聴覚の担当A藤さんは夏祭りの実行委員。

今年も中止になったらと心配していたので、無事に開催されてなによりである。

院内の雰囲気も普段とは違う感じで、飾り付けなどで夏祭りらしさが増していた。

午前中は食堂で団扇作りをされており、女性陣が数人二つのテーブルに分かれて作業をしていた。

入院してからよく話す知り合いの患者さんたちに出来映えを聞くと、みなさん満足されていた。

このような催しは長く入院している方々に、ひとときの憩いを与えるのだと思った。

午後が本番。

ノンアルコールビールやサワー、ジュース、そして目玉はかき氷が提供されていた。

お酒が好きで病気になった人や、病院の食事では味わえない甘味を楽しむ患者さんで賑わっていた。

トレーニングルームでは、ヨーヨー掬いや、輪投げなど、縁日風の演出で盛り上がっていた。

私は甘味に制限はないが、自らに課した戒めがあるから、丁重にお断りした。

脂こってりのステーキや焼肉。生クリームたっぷりのパンケーキやアイスクリームを一生分どころ二生分は食べたから、さほど執着心はない。

甘味については、病気になって生活習慣を改善しているのだから、ここで気を緩める訳にはいかない。

元の生活に戻ってから自制心が保てるわけがなく、だからこそ今回はぐっと我慢であった。

心臓のペースメーカーも入れて、体重も落として、血圧も安定させたら、100%果汁の林檎ジュースをお猪口で味わいながら飲む。

この目標のためなら、禁欲生活も悪くないものだ。

15時過ぎには夏祭りも終わり、普段の日常が戻ってきたのであった。

 

 

◾️8月21日(木)~23日(日)

13日から軟便が続いていることは開き直った。

どこまで続くのか逆に楽しむ気分だ。

これで更に体重が減ったらスリム化計画も捗るなどと、呑気に考えていた。

頭と気持ちを切り替えたら、なんだかモヤモヤした気分も晴々としたものとなった。

自主トレも自分勝手なトレーニングでなく、身体に最適な運動をセラピストさんたちに教わる。

そのメニューに素直な気持ちで取り組めるようになった。

そんな心境を知るはずもない理学療法士のメイン担当O本さん。

なんと階段の昇り降りを提案されたのだ。

まさか階段なんてずっと先の事だと思っていた。

予想外の展開にウキウキしちゃった。

階段のある場所は、患者が勝手に入れないように罠のごとき鳴子が仕掛けられている。

私には禁断の領域の一つである。

そんな禁断の領域に軽々と入り、階段の下から上を眺めたら、行けるか?行けるな!となった。

まずは3段、元気な足から踏みしめるよう上がり、そこに揃えるように麻痺の足を上げる。

こうした3段上がると、今度は下りは麻痺の足から降ろして、そこへ元気な足を揃えて無事に昇り降りが出来た。

次に段差を交互に上がるとなり、元気な足から麻痺の足を一段上に上げると、意外といけたのである。

それで終わりかと思っていたら、

「どうです、踊り場まで行けそうですか?」

そう言われたら行くしかないでしょう!

元気な足から踏み出し、同じその段に麻痺の足を乗せ、一段一段昇ったのだ。
昇りきると踊り場の手摺りまで1メートルほど捕まるところがない!

はてどうしたものかと一瞬考えたが、ここも行くっきゃないでしょ!

ヨチヨチ歩きで向かい側の手摺まで歩いたのだ。

手摺りに掴まったところで背中を壁につけて休み、気分はこれ以上は昇るのは無理、降りるのはどうだろ?であった。

壁に凭(もた)れながらセラピストさんに、「いまここでギブアップしたら担いで降りるのに応援三人くらい呼ばないとね」なんて冗談で言うと、

 「降りられませんか!?」

O本さんが真顔でひきつっている。

こりゃマズイなと

「冗談冗談、大丈夫ですよ」

と余裕綽々な態度で深呼吸しなが体勢を整えた。

手摺に掴まりながら下り階段の前に移動。

結論から言えば降りるのは昇りの何倍も大変だった。

まず麻痺の足から降ろすのだが、コントロールが上手く利かない。

足の着き場所が悪いと踏ん張りが利かず転倒の恐れがあるのだ。

慎重に足を降ろすも、左足を曲げながら踏ん張り、左手も手摺に力一杯掴まり、そんな状態で降りて行くので、降りきった時は精魂尽き果てた。

ただの階段の昇り降りは、半身麻痺の身には想像を絶する困難さであった
エスカレーターがあるから足が不自由でも大丈夫と思っていた。

けれどエスカレーターのほうがもっと困難で危険なことに思いが至った。

次のページ新たな禁断の領域へーー車椅子の身には、果てしなく遠い場所

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民主主義国家の政治をいかに動かし統治すべきか?

◎トランプ大統領と渡り合う対米外交術の極意とは?

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「日本は、国論分裂のままにいたずらに時間を食い、国家意志の決定と表明のタイミングの悪さや宣伝下手が災いし、結果的には世界トップ級の経済的貢献をし、汗も流したにもかかわらず、名誉を失うこととなった。

 納税者としては政治の要領の悪さがもどかしく悔しいかぎりである。

 私は「国力」というものの要件は経済力」、「軍事力」、そして「政治力」だと考えるが、これらの全てを備えた国家は、現在どこにも存在しない。

 (中略)

 そして日本では、疑いもなく政治力」がこれからのテーマである。

 「日本の政治に足りないものはなんだろう?」情報収集力? 国会の合議能力? 内閣の利害調整能力?  首相のメディア・アピール能力?  国民の権利を保証するマトモな選挙?  国民の参政意識やそれを育む教育制度?

 課題は随分ありそうだが、改革の糸口を探る上で、アメリカの政治システムはかなり参考になりそうだ。アメリカの政治にも問題は山とあるが、こと民主主義のプロセスについては、我々が謙虚に学ぶべき点が多いと思っている。

 (中略)

 本書では、行政府であるホワイトハウスにスポットを当てて同じテーマを追及した。「世界一強い男」が作られていく課程である大統領選挙の様子を描写することによって、大統領になりたい男や大統領になれた男たちの人間としての顔やフッーの国民が寄ってたかって国家の頂点に押し上げていく様をお伝えできるものになったと思う。 I hope you enjoy my book.」

(「はじめに」より抜粋)

 

◉大前研一氏、推薦!!

 「アメリカの大統領は単に米国の最高権力者であるばかりか、世界を支配する帝王となった。本書は、連邦議会立法調査官としてアメリカ政治の現場に接してきた高市さんが、その実態をわかりやすく解説している。」

 

ALL ABOUT THE U.S. PRESIDENTIAL POWER

How much do you know about the worlds’s most powerful person―the President of the United States of America? This is the way how he wins the Presidential election, and how he rules the White House, his mother country, and the World.

<著者略歴>

高市早苗(たかいち・さなえ)

1961年生まれ、奈良県出身。神戸大学経営学部卒業後、財団法人松下政経塾政治コース5年を修了。87年〜89年の間、パット•シュローダー連邦下院議員のもとで連邦議会立法調査官として働く。帰国後、亜細亜大学・日本経済短期大学専任教員に就任。テレビキャスター、政治評論家としても活躍。93年、第40回衆議院議員総選挙奈良県全県区から無所属で出馬し、初当選。96年に自由民主党に入党。2006年第1次安倍内閣で初入閣を果たす。12年、自由民主党政務調査会長女性として初めて就任。その後、自民党政権下で総務大臣、経済安全保障大臣を経験。2025年10月4日、自民党総裁選立候補3度目にして第29代自由民主党総裁になる。本書は1992年刊行『アメリカ大統領の権力のすべて』を新装重版したものである。

 

 

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真柄弘継

まがら ひろつぐ

現役出版局長

1966年丙午(ひのえうま)126日生まれ。

1988年(昭和63)に昭和最後の新卒として出版社に勤める。

以来、5つの出版社で販売、販売促進、編集、製作、広告の職務に従事して現在に至る。

出版一筋37年。業界の集まりでは様々な問題提起を行っている。

中でも書店問題では、町の本屋さんを守るため雑誌やネットなどのメディアで、いかにして紙の本の読者を増やすのか発信している。

 

2025年68日に脳梗塞を発症して半身不随の寝たきりとなる。

急性期病院16日間、回復期病院147日間、過酷なリハビリと自主トレーニング(103キロの体重が73キロに減量)で歩けるまで回復する。

入院期間の163日間はセラピスト、介護士、看護師、入院患者たちとの交流を日記に書き留めてきた。

自分自身が身体障害者となったことで、年間196万人の脳卒中患者たちや、その家族に向けてリハビリテーション病院の存在意義とリハビリの重要性を日記に書き記す。

また「転ばぬ先の杖」として、健康に過ごしている人たちへも、予防の大切さといざ脳卒中を発症した際の対処法を、リアルなリハビリの現場から当事者として警鐘を鳴らしている。

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