改憲はきちんとした政府で

 

 私は改憲派ですが、安倍による改憲だけは絶対に阻止しなければならない。国が崩壊するからです。安倍は憲法を改正して一院制や道州制の導入を目指すという。また、首相公選制を唱える「維新の会」ともつながっている。政治の腐敗もここまでくると言葉を失いますね。一院制を唱える人間を支持する「保守」って、「健康な病人」レベルの語義矛盾でしょう。

 二〇一五年一一月の大阪W選で維新の会が二勝したとき、首相官邸からは歓迎の声が上がった。同志の背中に矢を放つ外道。卑怯、卑劣、人間のクズですね。党内から反発の声は出ないのかと思っていたら、こんな記事を見かけた。ほぼ同時期に朝日新聞が自民党の党員、党友を対象に意識調査を行ったところ、歴代総裁の中でもっとも評価されたのは安倍だったと。保守的な側面もあったかつての自民党と急進的改革を唱える今の自民党はまったく別ものです。自浄作用も期待できない。安倍自民に幻想を持つのは、愚鈍という犯罪行為です。

 改憲にしても、どこをどう変えるかが重要であり、「改憲すればすべてよし」というのは「改憲すれば戦争が始まる」という左翼の思考停止と同じです。

 安倍が改憲するくらいなら、未来永劫、今の憲法のままでいい。改憲派も護憲派も右翼も左翼も保守も革新も、日本人なら今は護憲にまわるべきです。改憲はきちんとした政府ができてからでいい。

 野党や左翼にも問題があります。

 安倍に対し本質的な批判ができないまま、粛々とおかしな法案が通っている。既成左翼による安倍批判が効力を持たない理由は簡単で、左翼はもともと近代主義者ですが、この二〇年、急進的な近代主義革命が政権中枢において発生しているからです。要するに同類。よって、安倍の暴走を阻止するためには、野党や左翼は本質的な部分で自分の立ち位置、世界観を見つめ直す必要がある。それができなければ表層的なところで政治的対立が偽装され、国は破壊される一方だ。

 安倍政権を本気で駆逐するつもりがあるなら、自民党に愛想をつかした保守層、共産党支持層も含めて、暫定的にでも選挙協力を行う必要がある。

「国境なき記者団」により発表された「世界報道の自由度インデックス」によれば、二〇一〇年には、日本は世界一八〇カ国中一一位だったが、二〇一四年には五九位、二〇一五年には六一位、二〇一六年には七二位になっている。戦争もなく、殺害されたジャーナリストもいないのに、毎年ランクが下がっている。官邸はメディアのトップと蜜月の関係を築き、都合の悪い報道には圧力をかける。翼賛報道を続ける全国紙。北朝鮮みたいな国になってきましたね。

 政治からもっとも遠ざけなければならないものが、現在、政権中枢にもぐり込んでいる。

 安倍は二〇一五年の施政方針演説で「改革」を計三六回、二〇一六年の施政方針演説で「挑戦」を計二一回連呼した。

 いま必要なのは、改革でも挑戦でも「新しい国」をつくることでもない。真っ当な保守政治、成熟した議会政治を取り戻すことです。祖国をアホから守ることです。

(※適菜収著『安倍でもわかる政治思想入門』から本文抜粋)

 

著者略歴

適菜 収(てきな・おさむ)

1975年山梨県生まれ。作家。哲学者。ニーチェの代表作『アンチ・クリスト』を現代語訳にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』(以上、講談社+α新書)、『日本をダメにしたB層の研究』(講談社+α文庫)、『日本を救うC層の研究』、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(以上、講談社)、『死ぬ前に後悔しない読書術』(KKベストセラーズ)、『なぜ世界は不幸になったのか』(角川春樹事務所)など著書多数。安倍晋三の正体を暴いた渾身の最新刊『安倍でもわかる政治思想入門』(KKベストセラーズ)が発売即重版。全国書店、Amazonにて好評発売中。