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阪神・淡路大震災の日に生を受けた
新十両の小兵力士『照強』

大相撲雑記帳 第9回

写真/PIXTA

「強くなって、震災に遭った地元に
光を照らすように」と師匠が命名

 先の九州場所では新入幕の石浦が体重114キロの関取最軽量でありながら、初日黒星の翌日から10連勝の快進撃。一時は優勝争いのトップに立つ活躍で敢闘賞を受賞し、幕内前半戦の土俵を席巻した。十両でも宇良や里山らの業師ぶりが客席を沸かすなど、昨今は小兵力士の奮闘ぶりが目を引くが、このムーブメントに新たにまた1人、個性派関取が加わることになった。

 

 今場所は西幕下9枚目で7戦全勝の幕下優勝を飾った照強が、新年初場所の新十両を決めた。身長169センチ、体重112キロの小柄な体格ながら、強いハートと相手の懐に潜り込み、左前褌を引きつけて寄る速攻やしぶとさが持ち味だ。

 

「本当にうれしい。でも、自分としてはちょっと遅かった」と会見では笑みをたたえながらも複雑な表情。15歳で角界入りし、わずか2年で幕下に昇進したが、その後は何度も上位の厚い壁に跳ね返された。今年春場所は勝ち越せば十両昇進という状況ながら、3勝1敗から3連敗と苦杯を舐め「精神的にも苦しかった」と振り返る。ここ1年は稽古後に、体幹強化と筋力アップを目的としたハードなトレーニングを導入。「それがきっかけとなって結果に結びついた」と、入門から7年で晴れて関取の座を掴んだのだった。

 

 まだ21歳と若いが、この新鋭は生まれながらにしてある宿命を背負っている。もうすぐ22年が経とうとしている阪神淡路大震災当日、震源地に近い南あわじ市で生を受けた。毎年やってくる自身の誕生日は単なる“バースデー”というわけにはいかない。入門以来、“1.17”当日に取組があるときは勝っても負けても大勢の記者に囲まれてきたが、関取となれば休場さえしなければ、その日は確実に土俵に上がることになる。

 

「特別なものは絶対あるけど、いつもどおりにいきたい」との言葉には熱い思いがこもる。四股名は「強くなって震災に遭った地元に光を照らすように」と師匠の伊勢ケ濱親方(元横綱旭富士)が命名した。

 

「まだスタート地点に立ったばかり。これから恩返ししていきたい」と関取デビュー間近の照強。番付の上昇とともに背負うものは今後、さらに増えていくだろう。

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