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ふんどし一丁で歩くだけで人の価値観を変えることができる――1枚の布に情熱を注ぐ男たち

現在観測 第50回

・ふんどしを軸にした、イノベーションの会社

 私たちは、元をただせばふんどし一丁で街を歩く「ふんどしマン」から始まった組織です。
 なので、ただ単に「布を買ってふんどしを仕入れて売る」というよりもむしろ、「既存の概念や常識に挑戦して、壁を壊していく」活動をしよう、世に新しい価値観を生み出すイノベーティブや企業になろうと決意しました。
 私たち二人は、在学時に「東京大学i.school」というイノベーション創出のための教育機関で1年間学んだ同期でもあったのですが、そこでは「イノベーション」を単なる「技術革新」ではなく、「人や社会に新しい価値を提供し、人の行動や価値観に不可逆な変化をもたらすこと」と定義し、デザイン思考や新しい価値の創出について徹底的に議論を重ねていました。
 我々もそのようなマインドセットで、布一枚でどのように新たな表現方法を生み出し、人々の生活や価値観にどのような影響を与えられるのかを追求し、「ふんどし」というものをもう一度定義し直すことから始めました。

・ふんどしの価値、再発見

 その結果、もともと「男性用の下着の一種」に過ぎないふんどしを、その価値を「ズラす」ことでプロデュースしようとしています。
 今でこそリラックスウェアとして見直されつつあるふんどしですが、何もその出番は寝る時や祭りの時だけではありません。
 幾つかの大学で遊泳着として使われているように、スポーツウェアとして締め込んでもいいですし、マインドフルネスを高めるための高級なヨガウェアとしてもいいでしょう。また、飾るふんどしや食べるふんどしとしての用途も考えられます。
 なので既存の価値観に囚われず、天然繊維や最新のテクノロジーを駆使した生地を開拓したり、カイコから育てて上質なシルクで作ろうと試みています。時には食材でふんどしを作ってみようとも試みます。その多くは失敗に終わりますが……。
 私たちは相変わらず、日常生活でファッションの一部としてふんどしを用いています。ふんどしだけで全ての活動範囲をクリアするため、専用法被(はっぴ)などの独自開発を進めています。

・追求するのは「ふんどし」そのものではなく、「人間としての自分らしさ」

写真を拡大 (左上)ふんどし一枚で日常生活を可能にするための法被。(右下)ふんどしの魅力をプレゼンする機会もある。

 企業活動を円滑にする上では、下着としてのふんどしにフォーカスして、商品開発を全力で行うのがセオリーなのかもしれませんが、私たちは「衣服とは何か」「常識とは何か」という視点からスタートしたので、結果として「自分らしさ」とは何か追求するための活動をしていくつもりです。
 近い将来科学技術の進歩によって人類はシンギュラリティを迎え、人間の仕事の大半は機械に代替される、と不安視する見方もあります。そんな時代が到来するからこそ、機械に代替されない価値を身につけることが肝要だと私は思いますし、人間にしかできない仕事を見つける、あるいは作り出すことが必要だと考えます。言うなれば、「人間らしさ」「人間としてのアイデンティティ」を追求する、ということです。
 代表の星野が欧州から帰ってきて印象的だったのは、スーツを着た日本のサラリーマンが全くもって生き生きしていなかったこと、と言います。
 それが衝撃的だったのは、彼がヨーロッパで追求していたスーツは、仕事着でありつつもオシャレを追求し、自己表現を行うためのものとして存在していたのに対し、日本で見るサラリーマンのスーツは個性というよりもむしろ画一化の象徴、単に隣の人と同じ所属であることを示すためだけの服だと感じたからでしょう。
 彼の定義からは、スーツを着た大人は生き生きしていないといけないのですが、日本ではそれが感じられなかった。先述した「人間らしさ」の観点から言えば、それはあるべき未来ではないというのが私たちのスタンスです。
 そんな常識を壊し、衣服について新しい価値や考え方を世の中に提案する。そうして、ふんどしマンが社会に価値を生み出せるのではないかと考えています。

・「生き様」を世に示したい

 その意味では、我々のやりたいことはふんどしを世に広めるというよりもむしろ、コンセプトや「生き様を世に示す」ことと捉えた方が適当かもしれません。
 「人間らしさ」「自分らしさ」を追求して、生き生きと仕事を楽しむ姿、そんな姿勢を世に広め、思い切り自己表現をしたり、好きなことで生きて行く人を増やすために貢献する。ふんどし部は「ふんどし」ではなく「夢」を売る会社。そのようなイメージを持って活動を展開していきます。
 ここまでふんどしで熱く語る人間も珍しいかもしれませんが、ふんどしにはそれだけの熱量を持って取り組める魅力があるということかもしれません。未経験の皆さんにはぜひ、一度身につけてみてその魅力を体感してほしいと思っています。
 しかし、皆さんにふんどしを穿かせ歩かせることが私の真の目的ではありません。より多くの人が「自分らしさとは何か」と追求し、思い切り自己表現を行って、生き生きと人生を歩んでほしい。それが、ふんどしマンからの願いであり、日本の皆さんへの提案です。
 ふんどし部は、「挑戦する人」を応援するため、今日も元気に活動してます。

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株式会社ふんどし部

かぶしきがいしゃふんどしぶ

ふんどしが大好きな東大生二人が創業した、次世代型ふんどし企業。日本の伝統・文化を世界に広めるため、古くからあるふんどしを新しいアプローチで世の中にプロデュースする。日常生活すべてをふんどし一丁で過ごす「ふんどしマン」をブランドの軸に、ふんどしの製造・販売・企画・コンサルティングなどを行っている。ふんどしゴミ拾いやダンスイベントなどを定期的に行い、ふんどしを通して日本を楽しく盛り上げることを目指している。「株式会社ふんどし部」の詳細はこちらから。


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