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危険だらけの「動物治療」からペットを守れ!

ペットは自分で「ここが痛い」「調子が悪い」などということはできません。大切なペットを守るためにも、危険な動物治療の知識を身につけましょう。

 

自然治癒力を高めるには、睡眠ニャ……。

 私は獣医としてこの問題に向き合い、よりリスクの少ない治療法はないかと、40年近く模索を続けてきました。そして辿り着いたのが、犬に本来備わっている「自然治癒力」を活かした治療法です。生体は細胞でできており、細胞が分泌する蛋白で生命を維持しています。細胞には、自ら増殖して損傷個所を修復しようとする性質があります。手術などで人工的に「無理やり」治そうとすると、細胞に対して大きな侵襲(ダメージ)を与えてしまい、損傷の修復がうまくいきません。侵襲をなるべく小さく抑え、細胞で修復する力を活かして温存し、自然に治すということです。実はその方が、早く強く治ることが分っています。

 大切な愛犬を守るためには、まずは飼い主が治療の知識を持ち、獣医を選ぶ目にほかなりません。今はそれしか対応策がないのです。とくに小型犬に急増している骨折、脱臼、椎間板ヘルニアについては、自然治癒力を阻害するような「間違った手術」を施されているケースが頻発しています。愛犬を治療の負のスパイラルに陥れないためにも、飼い主の方々には正しい治療についてしっかりと理解して欲しいと思います。

 次回からは自然治癒力を活かした骨折治療や、プレート手術による副作用などについて詳しく解説していきます。

 

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岸上 義弘

きしがみ よしひろ

岸上獣医科病院

相談役

1956年大阪出身。1978年麻布獣医科大学卒業。その後、米国カリフォルニア大学デイビス校神経外科研究室に2年間研究留学。鳥取県の山根動物病院にて研修を行う。1983年より岸上獣医科臨床獣医師として従事、30年以上にわたり日本全国の外科難病症例のサポートにあたる。1998年より京都大学再生医科学研究所において、脊髄、末梢神経、骨、靱帯、皮膚、腎臓などの再生についての研究を行い、ペットへの幹細胞移植の第一人者と称される。2005年、日本獣医麻酔外科学会認定の設立専門医資格を取得。現在、日本獣医再生医療学会会長、宮崎大学・鳥取大学・大阪医科大学非常勤講師。


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