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堺の墓②鉄砲マイスター、理右衛門

季節と時節でつづる戦国おりおり第420回

 堺の地誌と著名人を紹介した『堺鑑(さかいかがみ)』という本に、こんな文章があります。

 「堺の鍛冶職人の家柄だった芝辻家では、妙西入道が初めて鉄砲を製作し見事な出来だった。その子孫の理右衛門の代にはその鉄砲はいよいよ精微を極める。その頃徳川家康は外国製の1貫目玉の青銅砲を見て、鉄製の大筒を作れないかと諸国の職人に打診したところ誰も手を挙げない。そこで理右衛門が請け負い、1貫500目玉の大筒をすぐに張り上げて献上した」。

 これが芝辻理右衛門で、その子孫は代々江戸幕府から堺鉄砲鍛冶の年寄役に任じられました。
ところで、ここで紹介されている鉄砲の1貫目(匁)玉、1貫500目玉はそれぞれ4キロ弱、5キロ半強です。妙西は種子島から運ばれて来た鉄砲を見本としてその製作に成功し、理右衛門は家康の要求に応えて慶長19年(1614)から始まる大坂の陣で豊臣方を撃つための大砲を作りました。実はこれ以前に幕府の出先機関・堺奉行の指示で小さい大筒も試作しており、その実績を買われたものです(『堺市史』他)。

 そのお墓は福成寺さんにありました。

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橋場 日月

はしば あきら

はしば・あきら/大阪府出身。古文書などの史料を駆使した独自のアプローチで、新たな史観を浮き彫りにする研究家兼作家。主な著作に『新説桶狭間合戦』(学研)、『地形で読み解く「真田三代」最強の秘密』(朝日新書)、『大判ビジュアル図解 大迫力!写真と絵でわかる日本史』(西東社)など。


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