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既存の枠にとらわれない夫婦への挑戦

現在観測 第15回

現代観測

ここまで、ひとつの夫婦の歴史の、ほんの一部を紹介した。といっても、私が記したのはマホさんの語りを基軸にしたもので、タカさんや彼らの子供から聞いたら、また別のストーリーになるかもしれない。それでも、この夫婦が自分たちのために試行錯誤してきたことに変わりはないだろう。

冒頭の声明に戻ろう。「私たち、夫婦の形を変えます」という宣言にあるように、マホさん夫婦は「夫婦」の意味を変更、拡張した。正確には、愛と性と結婚が結びついた近代のロマンチック・ラブ・イデオロギーにおける「夫婦」を独自のやり方でずらした、といえる。

いつの時代も規範や常識に囚われずに、親密な関係を築いている人はいるだろう。しかし、彼らはひっそりと生きてきたし、そうせざるを得ない状況がある。そのように考えると、マホさんが「私たちの関係」を公の場で語っていることは注目に価する。

同時に複数の人と合意の上で親密な関係を築く「ポリアモリー」、離婚した相手と再婚することなく継続的に性愛関係をもつ元夫婦、互いに恋人をもつ自由のあるオープンマリッジ、配偶者とは別のプラトニックな関係を保ったステディである「セカンド・パートナー」……。

近年では少しずつ、「私たちは、私たちのために、私たちの関係を決めていきます」と表明する人びとが増えてきている。

 

 

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深海 菊絵

ふかみ きくえ

親密性や倫理に関心を持ち、米国のポリアモリーを研究。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程に在籍(2015年10月現在)。専門は社会人類学。著書に『ポリアモリー 複数の愛を生きる』(平凡社)がある。

2013年より東京アートポイント計画の一事業として発足した「長島確のつくりかた研究所」研究員として活動。同研究所内に劇作家オノマリコと「エスノドラマ研究室」を立ち上げる。2016年1月に神奈川芸術劇場KAATで公演されるポリアモリーを題材とした演劇公演において、監修を務める。


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  • 深海 菊絵
  • 2015.06.15