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命を奪うコロナウイルスの登場! SARS(サーズ)とMERS(マーズ)【岩田健太郎教授・感染症から命を守る講義③

命を守る講義③「新型コロナウイルスの真実」


 感染症から命を守るための原理原則は、変わらない。この原則を体に染み込ませる決定版。
感染症専門医の第一人者・岩田健太郎神戸大学病院感染症教授の最新刊『新型コロナウイルスの真実』をもとに現在の感染者が急増する緊急事態に対し、私たちが「今、できる対策」を連続講義いただいた。「新型コロナウイルス感染症」から自分と家族、人々の命を守るために、今、私たちは何をすべきか。第3回目は、あの「SARS(サーズ)」と「MERS(マーズ)」ついて学びます。


■2002 SARS(サーズ)コロナウイルス

 ところが2002年にコロナウイルスの歴史が変わります
2002年、中国の広州を中心に、今までに見つかっていなかった新しいコロナウイルスが発見されました。これが後に「SARS(サーズ)」と呼ばれる病気の原因である「SARSコロナウイルス」です。
SARSとは、Severe Acute Respiratory Syndrome(重症急性呼吸器症候群)という英語の頭文字を縮めたもので、SARSコロナウイルスはその名のとおり、重症で急性の肺炎を引き起こします。これはハクビシンなどの哺乳類からやって来たウイルスだと考えられています。

SARSコロナウイルスはハクビシンなどの哺乳類からやって来たと考えられている

 従来のコロナウイルスは喉とか鼻など「首から上」の症状を引き起こすウイルスでしたが、このSARSコロナウイルスは「首より下」に位置している肺の病気を引き起こします。人は肺で酸素の交換をしますから、ここが病気を起こすと呼吸ができなくなります。
つまり、命に関わる病気の原因となるコロナウイルスが登場したんです。
SARSコロナウイルスの流行は中国国内にとどまらず、香港、さらにカナダドイツなど諸外国にも移っていって大問題になりました。2002年から2003年のことです。ぼくはちょうど2003年の夏から北京の診療所に勤めていたんですが、北京でも何千人というSARSの患者さんが出ました。
肺炎を起こしやすいSARSは致死率も高く、罹かかった人の死亡率は10 パーセントぐらいといわれました。10人に1人が亡くなる怖い病気だということで世界中で大問題になり、実際に何千人という患者さんが出て、そしてこれといった治療薬もなかったSARSですが、しっかりと隔離をして自然に治るのを待ったことで、延べ8000人ぐらいの患者さんが出ましたが、2003年には流行は収まりました。
それ以降SARSという病気は再発せずに、地上から消えてなくなった、現在人間の病気は起こしてない、ということになります。

 

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『新型コロナウイルスの真実』
岩田健太郎医師・著

 

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岩田 健太郎

いわた けんたろう

1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学都市安全研究センター教授。NYで炭疽菌テロ、北京でSARS流行時の臨床を経験。日本では亀田総合病院(千葉県)で、感染症内科部長、同総合診療・感染症科部長を歴任。著書に『予防接種は「効く」のか?』『1秒もムダに生きない』(ともに光文社新書)、『「患者様」が医療を壊す』(新潮選書)、『主体性は数えられるか』(筑摩選書)など多数。


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