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10年目の草食系男子は社会の何を変えたか?

現在観測 第12回

これまで、日本社会における「女性の生きづらさ」については、さまざまに論じられてきました。
ところが近年では、むしろ「男性の生きづらさ」が注目を集め始めています。
男性の生きづらさとは何か。生きづらい社会のなかで、若い男性はどのように変容しつつあるのか。
社会起業家・勝部元気さんにご寄稿いただきました。

 日本の男女不平等は、これまでのフェミニズム運動などにより、制度面では多少改革が進んできました。しかしながら男女観や社会的圧力などの面ではまだ他国に比して遅れをとっています。

私は制度というハード面ではなく、それを支える意識や価値観といったソフトの面でも「女性の生きづらさが無い社会、それによって男性の生きづらさも無い社会」を作って行きたいと思い活動をしています。

そこで本稿では「男女不平等社会ゆえに生じる男の生きづらさ」について私の考えを述べたいと思います。

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誕生から10年経った「草食系男子」

 

「草食系男子」という言葉が世に登場してからもうすぐ10年目を迎えます。この言葉の定着化が進んだこともあって、「男らしさ」を放棄することの自由が少しずつですが認められ始めたのではないでしょうか?極端な例ですが、女装趣味の男性が増えているのも、その流れの一つでしょう。その一方、時代の変化の中で、男らしく生きることが幸福に繋がっているとは、必ずしも言えなくなっていると考えられます。

現代の若者(※ここでは主に10代から30代までを想定)男性が「最近の若者は向上心に欠ける」という批判を受けるのは、昔は「上に行ってやる!」という思いが働いた男性も多かったからでしょう。ですが、それは「上のほうが良いに決まっている」という前提があったからです。現代の若者は果たして「努力の先に行きつくもの」を良いものや手に入れたいものだと思っているでしょうか?

つまり、男らしく生きる道に憧れなくなったのは、「自分も努力をして男らしくなりたい」と思えるような身近なロールモデルがいないからだと思うのです。とりわけ、自分たちの親世代の男性が、ジェンダーギャップ指数世界104位という男女不平等社会の中で、一家の大黒柱として女性を経済的に支配している一方で、会社というより権力のあるものに支配されています。

その現状を見て、「誰かに支配されたくないのであれば、誰かを支配してはいけない」ということを、今の若者は少しずつ気付き始めているように思うのです。なお、若者の○○離れの多くも、決して離れて行ったわけではなくて、「最初から良いものだと思ってすらいない」という認識が理解されていないところに、かなりの世代間ギャップを感じます。高い買い物をすることで自ら「幸せの奴隷」になるという愚行はもうしないのです。

なお、男性が結婚しない理由を問う調査では、概ね「経済的な理由」が第一位になりますし、多くの識者も「結婚できない男性が増えているのは、非正規雇用の増加などで男性の所得が減ったからだ」と発言しています。このように自分たちの力ではどうにもできない状況ですから、若者同士で小さなパイを巡って争うよりも、「男らしさ」を捨てて独身を貫いていたほうが幸せなのです。

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勝部 元気

かつべ げんき

ー論、現代社会論、コミュニケーション論、男女関係論が専門。現在は雑誌やwebマガジン等を活動の場としている他、女性の活躍を目指す企業に向けてリプロダクティブヘルス・ライツの視点から経営支援を行う株式会社リプロエージェント代表取締役CEOを務めるなど、各種社会事業に携わっている。



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