国民の命と国家財政と、どっちが大事なのでしょうか【中野剛志・新型コロナ緊急事態宣言下の日本の指針を語る】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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国民の命と国家財政と、どっちが大事なのでしょうか【中野剛志・新型コロナ緊急事態宣言下の日本の指針を語る】

◼️国民の命か、国民の経済か

新型コロナウイルス肺炎が世界で大流行。緊急事態宣言下の東京。写真:アフロ

 先日、ついに緊急事態宣言が出されましたが、休業の対象範囲や、休業補償の是非をめぐって、いろんな議論が巻き起こっています。

 休業の対象範囲を広げて感染症対策を強化すれば、経済に悪影響が及ぶ。
かといって、経済を重視して休業の対象範囲を限定すると、感染を封じ込められない。

 命をとるか、経済をとるか、という議論になっている。

 テレビで、そのように解説されているのを聴きました。
しかし、問題は「国民の命か、国民の経済か」ではないのではないでしょうか。
なぜなら、以前も論じたように、経済への打撃は、休業補償直接給付金といった形で国がお金を出すことで、かなり緩和できます。
また、経済への打撃が小さくできるならば、その分、感染症対策も強化できるので、命はもっと守られる。

 したがって、財政赤字を拡大すれば、命も経済も守ることは、可能です。
それは本年本WEB記事で述べた通りです。(【註1】参照)

【註1】2020年3月30日『BEST TiMES』
これは「第二次世界恐慌」だ!〜評論家・中野剛志氏が緊急寄稿~

https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/11487

◼️国民の命も、国家の財政も「守れる」経済の原理原則

 だから、問題は「国民の命か、経済か」ではなく、「国民の命か、国家の財政か」になります。
「国民の命か、国家財政か」と問われたら、当然、国民の命を優先すべきでしょう。
しかも、MMT(Modern Monetary Theory現代貨幣理論)を持ち出すまでもなく、自国通貨を発行する国は、(変動相場制の下では)財政破綻することはあり得ません。金利が暴騰してどうにもならなくなるようなこともない。

 「財政赤字を拡大すると、インフレになる」とかいう批判もあり、これは間違いではないですが、インフレというのは、消費や投資が旺盛で、供給が追い付かない状態のことです

 世界中で、「外出するな」「他人と接触するな」「休業しろ」と言われている状態で、休業補償や直接給付金をもらったって、消費がそんなに増えるはずもなく、インフレは起こしたくても起きようもない。

 インフレが起きるとしたら、マスクや消毒液といった需要の急増など、コロナウイルスのせいで実体経済に影響が出た場合でしょう。しかし、それらは、財政赤字のせいではありません。(【註2】<参考>参照)

【註2】<参考>2019年8月「FACTA ONLINE」
特別寄稿 中野剛志 消費増税も量的緩和も愚の骨頂!
https://facta.co.jp/article/201908017.html

 ちなみに、日本の国債がデフォルトしないというのは、別に驚くような話ではなく、財務省も認める事実です。その証拠に、2002年に、財務省が格付け会社宛に出した質問状に、こう書かれています。

「(1) 日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか。」【註3】財務省HP参照)

【註3】財務省HP「外国格付け会社宛意見書要旨」https://www.mof.go.jp/about_mof/other/other/rating/p140430.htm

 ですから、日本政府は、もっと休業補償や直接給付をバンバンやっていいのです。
そうすれば、国民の命も、国家の財政も、両方とも無事なのです。

次のページ政治家の皆さん日本が財政危機ではないことを理解してください!

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中野 剛志

なかの たけし

評論家

1971年、神奈川県生まれ。評論家。元京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治思想。96年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。01年に同大学院にて優等修士号、05年に博士号を取得。論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。主な著書に『日本思想史新論』(ちくま新書、山本七平賞奨励賞受賞)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『日本の没落』(幻冬舎新書)など多数。


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