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AⅠに東大合格「不可能」の理由とは?

なぜ、東大合格ロボットの、合格は絶望的なのか

◆「真の理解」に基づく研究を

 昔、パット・ヘイズ(Pat Hayes)というAI研究者(私がエセックス大学に留学していた時の指導教官だったのですが)が、人間の一般的な物理法則の理解のメカニズムを定式化しようという試みとして「Naive Physics Manifesto」という論文を書きました。これは、構想を述べた論文で、具体的な物理現象の理解のメカニズムが解明されているわけではないのですが、彼が構想したような理解のメカニズムを使って、物理の問題を解くというような野心的な研究を是非進めてほしいなーと希望する次第です。

 私とて、斬新なアイデアがあるわけでもなく、言語処理や言語理解に関しては昔機械翻訳を研究するチームに属していたことがあるという程度なので、偉そうなことは何も言えませんが、ニューラルネットを利用した言語処理、言語理解の試みを入試問題を理解して実際に解くという、「総合的な」知的営みにまで積み上げる努力を本気ですることが必要なのではないかと感じています。
 東ロボ君は、たくさんの研究者の努力でじわじわと偏差値を上げてきていて、東大に入れる偏差値70とかいう目標も不可能ではないかもしれません。ですが、それよりも人間と同じように物理の問題を読んだら、図も見て、実際の物理現象を想像し、理解し、そこから方程式を立てるというように「真の理解」に基づいて問題を解くという研究をしてほしいと思うのです

 その研究に深層学習など新しいニューラルネットの研究が役に立つかどうかは未知数ですが、少なくともシンボライザ的な処理機構を組み込んで、それと言語理解を結びつけるというような研究は興味深いし、トライすべきだと思われるのです。

ベスト新書『アルファ碁はなぜ人間に勝てたのか』より抜粋

 

 

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  • 斉藤 康己
  • 2016.10.08