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敗戦の原因を分析せず
国民への欺瞞に終始する

ミッドウェー海戦 “運命の5分間”の真実 第6回

 米軍はミッドウェー基地の防備を固め、戦闘機、爆撃機、雷撃機を増派した。このため攻撃隊は熾烈(しれつ)な対空砲火を浴び、第2次攻撃の必要が生まれた。これもまた敵の戦力を過小評価して生まれた誤算である。不十分な索敵も自軍の首を絞めてしまった。

  誤算は兵装転換という混乱をそのまま象徴するようなミスを招く。さらに各空母は基地からの爆撃、雷撃にさらされて後手に回り、敵艦爆隊の突入を許す要因になった。まさに誤算の連鎖である。

 基地にはレーダー(電波探信儀)が配備され、攻撃隊の動きを逐次捕捉していた。日本側も戦艦伊勢と日向(ひゅうが)に電探(試作品)を搭載していたが、この海戦で生かされることはなかった。何しろ機動部隊と後続の主力部隊とは約550キロも離れていた。これでは救援に駆けつけられない。

 この海戦後、第1航は解隊されたが、南雲忠一中将と参謀長の草鹿龍之介はとがめられることなく、新編制の第3艦隊に横滑りした。この例からもわかるように日本海軍には年功序列などの硬直化したシステムがあった。

 さらに敗戦の原因を徹底的に分析し、教訓として活かした形跡がない。それどころか関係した将兵の人事異動などで真相が伏せられた。これ以降、国民向けの大本営発表も疑問度を強めてゆく。

「飛龍」攻撃機の果敢な攻撃を受け、大破した米軍空母「ヨークタウン」

 

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松田 十刻

まつだ じゅっこく

1955年、岩手県生まれ。立教大学文学部卒業。盛岡タイムス、岩手日日新聞記者、「地方公論」編集人を経て執筆活動に入る。著書に「紫電改よ、永遠なれ」(新人物文庫)、「山口多聞」(光人社)、「撃墜王坂井三郎」(PHP文庫)など。


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