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あなたのしつけが子どもを苦しめている?

子どもがいじめを打ち明けられる親子関係

いじめに遭っている子どもは苦しい思いをしています。なのに、なぜ子どもはいじめに遭っていることを親に打ち明けられないのでしょうか。そこには、親の期待に応えたいがために追い込まれてしまっている子どもの姿があるのだとか……?

傍観者がいじめを悪化させてしまう?

いじめは、いじめっ子(加害者)といじめられっ子(被害者)の二者関係だけで起こるわけではないと、森田洋司・大阪市立大学名誉教授は指摘している。

はやし立てておもしろそうに眺める観衆と見て見ぬふりをする傍観者も加わった四層構造になっているのである。(森田洋司『いじめとは何か―教室の問題、社会の問題』中公新書、2010年)。

観衆は、自分でいじめに直接加わるわけではないが、周りでおもしろがり、はやし立てることでいじめを是認する。いじめに肯定的なメッセージを送って、火に油を注ぐようなことをするわけである。

傍観者が、いじめに対して見て見ぬふりをするのは、何よりも自分がいじめの被害者になるのが怖いからである。他の誰かがいじめのターゲットになっているかぎり、自分はいじめられずに済むと考えて、スケープゴートを見てむしろ安心しているような傍観者だっているかもしれない。

このような傍観者の存在が、いじめをのさばらせる構造になっている。それが森田先生の指摘である。

何よりも怖いのは、こうした四層構造では、傍観者も観衆も、いじめに加担しているという意識を持ちにくいことである。当然、加害意識も罪悪感も抱かずに済む。

その結果、いじめへの抑止力が働かず、加害者や支配者の暴走に歯止めがきかなくなってしまうのである。

 

 

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片田 珠美

かただ たまみ

1961年広島県生まれ。精神科医。京都大学非常勤講師。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士(京都大学)。フランス政府給費留学生としてパリ第八大学でラカン派の精神分析を学ぶ。臨床経験にもとづき、心の病の構造を分析。著書に『無差別殺人の精神分析』(新潮選書)、『一億総ガキ社会』(光文社新書)、『一億総うつ社会』(ちくま新書)、『他人を攻撃せずにはいられない人』『プライドが高くて迷惑な人』(ともにPHP新書)、『他人の意見を聞かない人』 (角川新書)、『正義という名の凶器』(小社)、『賢く「言い返す」技術―人に強くなるコミュニケーション』(三笠書房、近刊)などがある。


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