鳥居がヒント、緩まないナットの驚異の構造!

 そしてもうひとつ。振動が多い過酷な状況下でも、〝絶対に緩まない〟ネジがあります。
    これは、竹中製作所と同じく大阪の「ハードロック工業」が開発した「ハードロックナット」。
    いずれも社名が商品名になっているのが大阪らしさでしょうか。
    通常、ナットは長い年月を経たり、電車や新幹線などの振動が多いところで使用されると、構造上かならず緩んできてしまうものだというのは想像に難くありません。
    ですがハードロックナットは、こうした過酷な状況下でも、高い締結力を維持することができるのです。
   その締結力の高さは、世界一厳しい米国航空規格(NAS)の振動試験をクリアしたことが証明しているでしょう。

 緩まないナットが誕生したきっかけは、1973年、ハードロック工業の若林克彦社長が訪れた神社でした。

   ふと鳥居を見上げた際、打ち込まれたクサビを見つけます。
   これを見て、ナットとボルトのジョイント部分を凹凸にして噛ませるダブルナットを思いつきます。
    ただし、単に凹凸にしてもクサビの効果は得られないため、凹凸が噛み合う部分を斜めに傾斜させ、凸型ナットだけは穴の中心をずらした(偏心)構造にしたのです。

 この凸型ナットをボルトに通し、上から凹型ナットを締めると、穴の中心のずれにより、凹凸部が噛みあうときにお互いをボルトに押しつけ合うかたちになり、強い締結力が生まれます。
    偏心した凸型ナットが、クサビの役割を果たすというわけです。

 すぐにハードロックナットは完成し、若林社長はまず、京阪神の大手私鉄・阪神電鉄へ試験的に使ってもらえないかと売り込みます。

   レールは数分間隔で列車が通るため、いずれ必ず緩み、深夜点検時に締め直していることを若林社長は知っていたのです。

ハードロックナットが使われている東京スカイツリー。

 こうして試験的に使ってもらったところ、3カ月経っても緩みは見られず見事採用。この実績をもとに、拡販・受注を得ることにも成功します。

 また、安全性の向上だけでなく、締め直しがほとんど必要ないことから、メンテナンスフリー=人件費の削減にも効果があると評判に。この評判がさらに評判を呼び、1990年代にはJR東日本のほぼ全線のレールの継ぎ目に採用されるまでにいたります。

 ハードロックナットの勢いは、その後さらに増し、韓国や台湾、イギリス、ドイツなどの鉄道にも採用され、じつは東京スカイツリーにも約40万個使用され、国内外問わず絶大な支持を得ています。

世界が絶賛する日本 われわれが知らない進化する真価』より