あくまで都市伝説なのだが、いま中国で起きているさまざまな現象を見ると、まんざらこの予想もはずれではないかもしれない、という気がしてくる。むろん、習近平失脚あるいは体制改革説は、私の希望的観測も入っている。私は習近平政権が強人独裁を確立して、米国をしのぐ強大な軍事力と経済規模を持つ大国になれば、いわゆる米中新冷戦構造の時代が始まり、地政学的にそのはざまにあり、自前の国防軍も持っていない日本には、非常に厳しい国際環境が待ち受けることになるのではないか、と不安に思っている。

 もっとも、習近平政権が強人独裁を確立するにしろ、あるいは次の党大会に向けた権力闘争の過程で失脚したり、引退したりするにしろ、どちらに転んでも、今の中国の在り方は、日本にとって、いつはじけてもおかしくない大きな危機をはらんでいる。

 習近平の目的が軍権掌握による強固な専制体制の確立であるとすれば、まず日本の安全保障にとって絶対的脅威である。

 実際、尖閣諸島界隈の偶発的軍事衝突があってもおかしくないくらい日中関係は緊迫している。これは胡錦濤時代の反日デモによる大衆の不満のガス抜きとはレベルの違う危機である。江沢民、胡錦濤政権時代はまがりなりにも経済成長優先で、そのためになんのかんのいっても日米との関係を重視してきた。だが習近平政権は軍権を掌握するためであれば、日米に対して軍事行動を起こしてもよいと思っているふしがある。あるいは軍事行動を起こすことが、軍権掌握につながると考えているように見える。

※福島香織著『赤い帝国・中国が滅びる日』発売記念、緊急集中抜粋連載。

 

著者略歴

福島香織(ふくしま・かおり)

1967年、奈良県生まれ。大阪大学文学部卒業後、産経新聞社大阪本社に入社。1998年上海・復旦大学に1年間語学留学。2001年に香港支局長、2002年春より2008年秋まで中国総局特派員として北京に駐在。2009年11月末に退社後、フリー記者として取材、執筆を開始する。テーマは「中国という国の内幕の解剖」。社会、文化、政治、経済など多角的な取材を通じて〝近くて遠い国の大国〟との付き合い方を考える。日経ビジネスオンラインで中国新聞趣聞~チャイナ・ゴシップス、月刊「Hanada」誌上で「現代中国残酷物語」を連載している。TBSラジオ「荒川強啓 デイ・キャッチ!」水曜ニュースクリップにレギュラー出演中。著書に『潜入ルポ!中国の女』、『中国「反日デモ」の深層』、『現代中国悪女列伝』、『本当は日本が大好きな中国人』、『権力闘争がわかれば中国がわかる』など。共著も多数。