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「何の役にも立たない」ニュートリノ研究の凄さとは?

サイエンス作家・竹内薫のノーベル賞プレイバック講義【第二回】

「ニュートリノは役に立つのか?」は愚問

 じゃあこれがわたしたちの生活にどう役立つか? これは梶田先生が去年マスコミに対して散々言っていましたけど、「何の役にも立たない」。ただし、それは「いまは」ということで100年後どうなっているかは分からない。基礎研究から何が出てくるか、それは誰にも分からない。でも基礎研究がないとそもそも何も出てこない。そこは皆さんに押さえていてほしいなと思います。

 こないだのオートファジーも、例えば将来的にはガンの研究に役立つ、パーキンソン病とか神経系の疾患に役立つと言われていますが、大隅(良典)先生はそれらの病気の研究をしていたわけではなく、酵母の基礎研究を長年続けてこられてきた。それがあって初めて将来の実用の可能性も見えてくるのです。

 他には、電子の発見ですよね。それが何の役に立つのか、発見された時には誰も分からない。だけどいまエレクトロニクスがなかったらどうなりますか。そこにあるスマホやICレコーダーなんかもないわけじゃないですか。もう何もない状態になりますよね。

 素粒子というのはある意味、宇宙の構成物質、宇宙を作っている一番小さな粒子じゃないですか。宇宙を構成している一番小さなもの。それを研究するというのは究極の研究ですよね。本当に基礎研究の中でも素粒子の研究ができるのは先進国に限られているんです。

 

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竹内 薫

たけうち かおる


 



1960年、東京生まれ。サイエンス作家。東京大学卒。マギル大学大学院博士課程修了。理学博士。「サイエンスZERO」(NHK Eテレ)のナビゲーターも務める 。

 


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