■投げられないから、コマンドが向上しない

「ドミニカでも投手を大事に育てようとするがゆえに、より迅速な成長を阻害しているのかもしれない。多くの球数を投げないことには、コマンドはなかなか向上しない。球種的にも直球、スライダーくらいしか投げられず、ふたつ目の球種が思う通りに向上しないケースもある。その一方で、日本人投手はより多くの球数を安定したペースで投げる。おかげで肩ができて、変化球も学べるし、ストライクゾーンの使い方も学べる。そこが最大の違いだし、日本人投手たちのメジャーでの成功の最大の理由は真っ直ぐの制球力にあると思う。多くが安定してクオリティの高いストライクを投げ込めるからね。アメリカではすでに廃れた球種になっていたスプリット・フィンガード・ファーストボールが彼らにとっての重要な武器になっている。球種の多さも利点に違いないが、速球のコマンド、投げる人間が少なくなっていたスプリッターをより効果的に操るというその2点が、日本人投手の近年の活躍に繋がっているように思う」

 興味深いのは、多種の変化球を上質なレベルで扱うことや、コントロールがいいこと、スプリッターを操れることなど、日本人の長所が「球数を投げる」ことで培われたと考えていることである。

 こうしたカブラル氏の結論は、日本球界出身選手、メジャーリーグで活躍する日本選手の調整法を目撃してきたアメリカ球界関係者と同じものであった。この話題について深い考察を巡らせているAP通信のマーク・フィッツパトリック記者は、アメリカの多くの関係者の想いをまとめるような意見を残してくれた。

「私が理解する限り、日本ではアメリカとはまったく違う方法で投手を育成する。簡単に言うと、より多くの球を投げる。日本では肩を作るために多くの球数を投げさせるという考え方で、それが間違っているとは思わない。その方針のおかげで開花した選手はたくさんいるだろう。一方、アメリカでは可能な限りに球数を抑えようとする。若い投手を甘やかしているという言い方がされることがあるし、ノーラン・ライアンのように〝もっと多く投げさせるべき〟という人もいる。良い悪いの答えはないと思う。ただ、最近では多くの投手がトミー・ジョン手術を受けている背景として、身体ができていない段階で速い球を数多く投げることがあるとされている。投手には登板日の合間に休みが必要なことは間違いないとは思う。(日本の高校野球で見られるように)100球以上を投げた投手が、その1、2日後に再び登板するという習慣はやはりポジティブには捉えられない。投手に限らず、どんなアスリートも身体に絶えず負荷をかけ続けるべきではないんだ」