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自衛隊が国民から孤立してしまっているのではないか

いま誇るべき日本人の精神 第13回

 私は日本は世界で三つ目の種類の憲法を、つくりだしたと、思っている。日本は憲法を自由自在に解釈してきたから、人類史上で最初の「解釈憲法」を加えたのだ。
 自民党が一九五五(昭和三十)年に結党された時に、「憲法改正」を党綱領の重要な柱として、掲げた。
 それならば、自衛隊が合憲であるといわずに、結党してから、すぐに「自衛隊は現行憲法のもとで、違憲である」といって、国民に憲法改正の是非を問うべきだった。
 国民の圧倒的多数が、「軍隊がなければ、日本の安全を守ることができない」と判断しただろうから、もっと早い時期に、憲法改正が実現していたはずだ。
 自衛隊員が「軍人」ではなく、一般公務員でしかないために、国民から敬意を払われることがない。
 自衛隊では「兵科」という言葉も、使われない。「職種」というが、一般企業のようではないか。
 防衛省や、駐屯地、基地の正門に立つ隊員は、「衛兵」と呼ばれていない。 いったい何と、呼んでいるのだろうか。
 私は一九七〇年代に防衛庁から要請されて、戦後最初の国防問題の研究所である「日本安全保障研究センター」を立ち上げた。
 アメリカの戦略研究所と、防衛問題について、日米初の民間における共同研究を行った時には、今日の政府の安全保障会議は、国を守る「国防会議」と呼ばれていた。「国防方針の大綱」も、いつの間にか、「防衛方針の大綱」になってしまった。
 なぜなのか、「国防」という言葉を嫌うようになった。
 防衛庁が防衛省に昇格する前に、自民党のなかに、防衛庁の省昇格をはかる議員連盟がつくられていた。私を講師として招いてくれた。
 私が「防衛省ではなく、国防省とするべきだ」と説いたところ、有力議員が「それでは、中国と韓国を刺激することになる」と、発言した。そこで、「中国と韓国では、『国防部』と呼んでいますよ」と反論したが、聞き入れられなかった。
 それにしても、自衛隊の高齢化は、異常なことである。これでは、とうてい戦力として役に立たない。
 高齢化が進んでいるために、自衛隊は〃上級者ばかりの軍隊〃となっている。
 アメリカ軍も、中国の人民解放軍も、台湾軍も、将校、下士官、兵の比率が、一対二対二となっているのに、自衛隊では幹部(将校)に対する、一般隊員と呼ばれる曹(下士官)と士(兵)の比率が、一対〇・八となっている。それも、曹のほうが士に対して、圧倒的に多い。
 自衛隊員の高齢化を深刻な問題として、防衛省の防衛研究所や、財務省による研究が行われてきたが、研究ばかりで、どのようにして改善すべきか、具体的に対応することがない。
 国民が自衛隊に親しむために、「普通科」という呼びかたを「歩兵」に、「特科」を「砲兵」として復活し、階級を国際的に用いられている、大将、中将、少将、大佐、中佐、少佐、大尉、中尉、少尉などの呼称に、戻すべきである。

 自衛隊と呼ぶことによって、軍の紛い物にして、それでよしとしているのでは、国が危ない。

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加瀬 英明

かせ ひであき

1936年東京生まれ。外交評論家。慶應義塾大学、エール大学、コロンビア大学に学ぶ。「ブリタニカ国際大百科事典」初代編集長。1977年より福田・中曽根内閣で首相特別顧問を務めた。日本ペンクラブ理事、松下政経塾相談役などを歴任。著書に『イギリス 衰亡しない伝統国家』(講談社)、『天皇家の戦い』(新潮社)、『徳の国富論』(自由社)、『アメリカはいつまで超大国でいられるか』(祥伝社)、『中国人韓国人にはなぜ「心」がないのか』、『大東亜戦争で日本はいかに世界を変えたか』、『いま誇るべき日本人の精神』(ともにKKベストセラーズ)など。



 


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