部屋と調和する

沼畑 3.11以降、変わったことはありますか?

松尾 まず私は、年間3万人の自殺者に対して心を寄せることを続けようと思いました。自分の立ち位置をもう一度見た。実際にそのあと、カウンセリングに来る人が増えたんです。人生をもう一度見つめ直したいという人たち。そのままの人生を継続したいという人もいれば、人生を変えたいという人もいた。今もサステイナビリティの研究で会った人に聞くと、3.11を契機に人生を変えた人ばかりなんです。

沼畑 フェスとかキャンプっていうのはもともと日常から逃れる場所として人気だったと思うんですけど、3.11以降は「日常を取り戻したい」概念もあった。すべてが変わってしまったから。もしくは、普通の静かな暮らしに本質があったんだと気づいた。普段の暮らしに集中して、大切にするために、モノを減らして、非日常と日常の境目をなくしたのがミニマリズムなんです。今まで非日常だと思って楽しんでいた自然の中で感じるような感性、集中力を部屋でも感じれるようにする。そのために床を拭いたり、食器を拭いたり、片付けたり、整理整頓したり、常に整えている。その行動自体に歓びを感じたりするんです。

松尾 毎日の中に聖なる時間があって、集中してほしい。リトリートに行くんじゃなくて、今日一日、社会に生きることで自分の調和とずれてしまったところを微調整して、自分の情緒がどうなのか受け取ってほしい。それが毎日10分間できればリトリートは必要ないのかもしれない。

沼畑 毎日家事することとか、毎日同じ風景を見て通勤することだとか、それが安定だったり調和に繋がることもあると思うんです。

松尾 私が船に乗っていて嫌だったのが、家事ができなかったこと。家事がしたかった。自分で食事作って洗い物したかった。自分のための調味料作ったり、アイロンかけをすることとかが、大事なんだって気づきました。あと、突然ですがこの空間(部屋)って変化していく自分に調和していくんですね。常に部屋が私の考えに寄ってきてくれる。入ってから1時間30分くらいで、自分の様子が変わってきて、部屋の印象が変わってきた。

沼畑 僕はそれを勝手に「ミニマリズム性」って読んでいるんです。自分の波動とぴったり合うときがあるんです。

松尾 際立つ。これは…。普段、モノが溢れてるというか、モノがあると、それを排除しようとしながら、そうなりたいと思っているのかもしれない。見ないようにしたりして。ここは居心地の良さが際立ってます。面白い!

沼畑 取材に来る人たちも、機材を持ち込んで忙しくするんじゃなくて、一度一人になって5分でもゆっくりしてほしいと思うんです。そうすると感じるものがあるから。

松尾 豊かさが1時間半前と全然違う。ここ、豊かなんだって思った。

沼畑 それがそれぞれの人の部屋で起こると思うんです。試しにストレージに全部荷物を入れたらわかると思うんですが。

松尾 1年間やってみたい。でもやったら戻れなさそう。戻れないよね?

沼畑 戻れないです。

松尾 情報が多すぎってなりそう。

沼畑 情報が多いとある場所に辿り着くために邪魔になることもありますよね。

松尾 確かに。生き方を変えるのにこの部屋で暮らすのがいいかも。あと、もっと捨てられるっていうロールモデルを見た気がする。自分の中では十分断捨離したって思ってるし、シンプルに生きているつもりだけど、もっとやれるって思った。それに、その快適さがわかったから、期待値が上がってきた。本はどうしてるんですか?

沼畑 プライベートの本は全部捨てました。

松尾 ええ、潔(いさぎ)いい…。

畑 自分が出した写真集とか本とか、仕事用資料が数冊あります。あとは電子書籍ですね。

松尾 潔いいね。居心地の良さを感じてロールモデルができた。旦那にも見せたい(笑)。

 

★対談のお相手★

松尾祥子(まつお・しょうこ)さん

 

臨床心理士、アライアント国際大学/カリフォルニア臨床心理大学院修士卒、アロマセラピスト、アートセラピスト、リトリートコーディネーター。1999年より「アロマ×心理×自然」をベースに、人、社会、地球の持続可能性に関心を寄せて活動。アロマテラピーやメンタルヘルス、ホスピタリティのコンサルタント、赤坂溜池クリニックにて統合的なアプローチにてカウンセリングやコーチングを行う他、コミュニティづくりや再生可能エネルギーの研究へ参加している。(株)SAFARI代表。HP: http://www.aroma-safari.com