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自然の波動に合わせる 
~「リトリート」と「ミニマリズム」の共通点~

「最小限主義の心理学」不定期連載第7回

夜遊びは悪い?

沼畑 夕方から夜にかけての時間を外にいたいと思うのですが、実際はなかなか難しいんです。娘を保育園に迎えに行って、家でご飯作っているともう夕方から夜になってしまう。一番豊かな時間を外で過ごせない。子どものいる家はほとんどそうだと思うんです。一家団欒が大事で、外に出てると夜遊び。最近はその時間を散歩で街をふらふらしたりするように心がけてます。夏祭りやキャンプはそこがいいんですよ。

松尾 谷根千とかは夕方、人がいっぱいですよね。すごいわかる。家中の窓を開けたり、オープンルーフになんないかなと思ったりする。そのくらいの時間にクルマに乗ってるのもいいですよね。

沼畑 クルマを椅子のある空間と見立てているので、道路の上に椅子を置いて空や雨を眺めることができる空間と私は捉えているんです。だからすごくそんなときに心が晴れやかになる。オープンカーだともっといいんですが。

松尾 そういう発想はなかった。自分の居場所を作るということですよね。私はいつも安全運転ばかり考えていて、心に余裕がないのかもしれない。でもだから好きなのかも。自分の空間で移動できるということ。クルマに入って家に帰る前にメンタルコンディションを整えるという人もいるみたいですよ。蓼科までは3時間くらいかかるんですけど、一人でドライブして、歌いながら、時に共感して泣いたりしてます(笑)。今はサステナビリティの研究活動で、自然エネルギーを使った街作りの研究でよく地方に行っているんです。なので自然の中にけっこういて、すごく満たされているんです(笑)。なので最近リトリート企画がないんですが、そろそろ清里でやりたいですね。自分の真ん中にあるのは自然で、それは大自然であり、自分の自然に佇むという意味の自然でもある。私の活動の最初はアロマセラピストで、香りを嗅ぐことで自分の内面を探っていこうというのがあって。対話の方法に植物が使われているんですよね。そうしてカウンセリングを始めて、山登りもしていて、ある日、山が最大のセラピストだなって思ったんです。普段は私っていうセラピストがいて、安心しているから相手は動くことができる。でも常に一緒に居られない。だから、それを少しずつ自然物に移行していてて、山のような自然があるからあなたは生きていけるよって語りかけるんです。

沼畑 空港の雰囲気が好きなんですが。

松尾 たしかに昔は大好きだった。飛行機のドアがクローズしたときのワクワク感は今もある。帰ってきたときの空港は安らぎを感じるし。

沼畑 もともと、そういうフライトアテンダントという仕事でなかったら、リトリートをやってましたか?

松尾 大学生のときはキャンプしてたんです。山登りは社会人になってから。欠かせなかった。自然の中に入らないとやってけなかった。メンタルヘルスについて考えたのは、自分にとって必要だったからです。

沼畑 飛行機で着いた先ではリラックスして過ごせてたんですか?

松尾 大勢で行動するとどうしても買い物になるんです。でも、たまに気の合う仲間と二人だけで過ごせる場合は、たとえばロスのビーチでのんびりしたり、ローラーブレードしたり、乗馬したりとか、山に登ったりしてました。でも、絶対怪我してはいけないので、あくまで安全な感じでした。勤務の延長なので、日本に帰ってきてからの三日間は山に行って、好きに過ごしてました。仕事は厳しかったし、時間は絶対という概念もあったのだけど、結局は人は生まれて死んで、その間にどれだけ愛情の交換ができるかというところに行き着いたんです。日本の当たり前に縛られて、会社のルールに縛られて、そこから降りてみると、絶対的なものだと思って縛られていることに多かったと気づいたんです。飛行機の中で時差のことを考えて、時間って人が決めているんだと気づいたんですね。それで、今何やりたいかと思ったら、アロマをやりたかった。だからフライトアテンダントをやめて、アロマの学校に通ったんです。それ以来、それが自分の心に従って生きようというサンプルになった。

沼畑 アロマテラピーと山は必ずしも結びつかないですよね?

松尾 ぜんぜん結びつかないですよね。限られたエネルギーしかないと思ってるから、それをどこに手向けるかって考えていて、今も限られた地球のエネルギーをどう使っていくかということを考えてるので、そこには一貫性があるんですよ。限られたもののなかで、豊かに生きる方法はなんだろうってことなんです。アロマも山も、そこは共通している。

沼畑 人は便利なものに囲まれていても生きていけるし、囲まれてなくても生きていける。だから環境がそれを左右するんですよね。電気をいっぱい使う家の環境があれば、たぶん便利でいっぱい使う。でも、使わない環境にすれば使わない。便利なものに囲まれているのに使わないのは難しいんです。

松尾 そうですよね。それに、地球のエネルギーもそうだけど、自分のエネルギーも限られてる。みんなは自分のエネルギーは限界があると思ってないのかもしれない。だからこれもあれもってなって、たくさん稼ぐという方向に体力を注いでいく。自分はそれだけ動いても死なないと思ってる。私はあんまり考えすぎると疲れちゃうしとも思ってる(笑)。だから手向けられるエネルギーは大事なものに注ぎたい。人間関係も本当に大事な人と築いているし、余裕があってパワーがあるなと思えばいろんな人と遊べるけど、普段は本当に会いたい人としか会わない。

沼畑 ある程度、年を取ると徹夜ができなくなったり、いろいろ限界がわかってきますよね。

松尾 そう。それが心理学で言うとミドルエイジ・クライシスで、ユングが生き方を変える時代って言っている。それが、「あ、失うものばかりだ」となると、すごくメンタルが落ちちゃうんです。勝ち組勝ち組ってなってきた人たちが、会社内で絶対的ポストが減ってきて、それでも勝ち続けることは大変で。社会基準の勝ち負けというだけなんですけど。人生では負けじゃないということに気がつけば幸せになります。全員がエースになれないし、そんな会社はあり得ない。本当はいろんな仕事に意義を見いだせるし、同期のサポートもできる。また、家族や友達との関係で必要性を感じたりすることもあるし、自分のハートに正直になることで幸せを感じることもできる。社会評価じゃなくて、自分評価ができるようになるといいんです。だから、レールから降りると言う行動は実はすごく大事なんです。

沼畑 みんな頑張り屋さんということでしょうか。

松尾 そう。みんな頑張っている。うまくいっているときはすごくいいし、否定することではない。でも苦しみを感じているならば、降りどきの可能性もある。鬱病というのはとても苦しいけど、苦しいときがやってきたから、やっと降りられる。苦しくなければ、勝ち組の気持ちよさで降りる必要もない。降ろさせてもらえない環境というものある。家族のみんなが応援しているとか。でも、降りたら家族もハグしてくれるかもしれない。

沼畑 『LIFE!』という映画で、都会の大会社に勤めている主人公が大自然を旅したあとに、表情が変わるというシーンがあって、自然と向き合うことでNYの人間関係だけで生きてきた主人公の目の向け方が変わるというのが凄く印象的でした。

松尾 私も山を登っているときに、すごい岩場があって、もうパニック寸前だったんです。でも、そのとき、五感が自分に必要な情報だけにフォーカスしはじめて、渡り終わったら全体像がふわっと見えてきたんです。あ、人は死ぬか生きるかのときは、大切な情報だけにフォーカスできるんだと思いました。そのフォーカスの仕方が、都会に帰ってきてからも使えて、今までの人間関係がシンプルに思えてきた。たとえば上司の寵愛を受けなくなると、その人にとっては死を意味するから、そこにフォーカスしてる。でも、その人が山に登ると、息をしてるって凄いっていうことにフォーカスしたりもする。そのときに本当にご寵愛は必要なのかって思えてきたりするんです。

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沼畑 直樹

ぬまはた なおき

ミニマリスト。テーブルマガジンズ代表。元バックパッカー。

2013年、「ミニマリズム」「ミニマリスト」についての記事を発表し、佐々木典士氏とともにブログサイト≪ミニマル&イズム(minimalism.jp)≫をたち上げる。 著書は、小説『ハテナシ』、写真集『ジヴェリ』『パールロード』(Rem York Maash Haas名義)など。


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