見てみないフリをする人々。日本崩壊を示す兆候はすでに噴出している【適菜収】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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見てみないフリをする人々。日本崩壊を示す兆候はすでに噴出している【適菜収】

【隔週連載】だから何度も言ったのに 第76回


2024年の年末、気が付いたら日本は貧しい国になっていた。道徳も破壊された。街は暗くなり、カスタマーサービスの電話はどこの会社もなかなかつながらない。マイナ保険証、インボイスの導入……どんどん不便な国になる一方、底が抜けた連中が暴走を続けている。新刊『自民党の大罪』(祥伝社新書)で平成元年以降、30年以上かけて、自民党が腐っていった過程を描写した適菜氏の「だから何度も言ったのに」第76回。


N国党党首・立花孝志が南あわじ市長選挙への立候補を表明(2024年11月22日/産経ビジュアル)

 

■予知はできないが警戒はできる

 

 地震の後に、「そういえば、前日の空の色が変だった」「見たこともない形の雲が出ていた」「井戸の水が濁っていた」といった声が出ることがある。他にも、地盤の隆起や沈降、海面の変動、温泉の枯渇や異常湧出、温度変化、地鳴りなどもある。ナマズやネズミなど、動物が異常行動を示すという話もある。

 現在の科学技術では、地震の発生時期、場所、規模を正確に予測することはできない。それでも注意深く前兆を観測することにより、準備、警戒することはできる。

    *

これは自然災害に限った話ではない。たとえば、恋人と別れてしまった後で、「あのときの一言はそういう意味だったのか」と後から気づくこともある。

    *

 後悔先に立たず。兆候はたくさんあったのに、そしてそれを肌で感じていたにもかかわらず、具体的に対応しなかった結果、ひどい目に遭ったりする。自業自得と切り捨てるのは簡単だが、「なんか変だよな」と思いつつ、日々の生活に追われるのが人間でもある。

    *

 わが国は崩壊のカウントダウンに入っている。そしてそれは百の兆候に表れている。

    *

 別に大げさな話をしているわけではない。

 これまで何度も書いてきたことなので、手短に示すが、三つのメルクマールがある。

 一つは2015年の安保法制の際、国を運営する手続が破壊されたことだ。安倍晋三は、お仲間を集めて有識者懇談会をつくり、そこで集団的自衛権を行使できるようにお膳立てをしてもらってから閣議決定し、嘘とデマを社会に投下し、法制局長官の首をすげ替え、アメリカで勝手に約束してきて、最後に国会に諮り、強行採決した。さらには首相補佐官の礒崎陽輔が「法的安定性は関係ない」と言い出した。発言を撤回したとはいえ、これは近代国家としての建前をかなぐり捨てたということである。

 二つ目は、安倍政権下で省庁をまたがる大規模な不正が発覚し、責任がうやむやになっていることだ。財務省の公文書改竄、防衛省の日報隠蔽、厚生労働省のデータ捏造、法務省のデータごまかし、国土交通省の基幹統計の書き換え……。国の信頼は完全に破壊された。

 三つ目は、2017年、防衛相の稲田朋美が、「(南スーダンの戦闘で)事実行為としての殺傷行為はあったが、憲法九条上の問題になる言葉は使うべきではないことから、(日報で)武力衝突という言葉を使っている」と発言したことだ。要するに国が憲法を無視していることを公言したわけだ。

    *

 これを正常な近代国家と考えるのは無理がある。

    *

今、社会が疲れ果てている。多くの人がうんざりし、面倒になり、黙り込んでしまう。

 その隙を狙って、いかがわしい連中がラストスパークをかけてきた。

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  • 目次

はじめに−−「B層」とは何か?

✳︎

第一章 内田樹と『日本辺境論』

辺境と偏狭

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神

B層グルメと某評論家

B層という言葉が出てきた経緯

なぜ日本はこんなことになってしまったのか

ルース・ベネディクトの『菊と刀』

安倍晋三の行動原理

学問のブレイクスルー

マイケル・ポランニーと暗黙知

百人一首を暗記する意味

「型」を知るということの贅沢

 ✳︎

第二章 自立を拒絶する人たち

白井聡の『永続敗戦論』

終戦記念日という欺瞞

冗談は櫻井よしこさん

「サヨク」と「保守」の自己欺瞞

「主権の欲求不満」の解消

 ✳︎

第三章 「正義」を笠に着る人たち

ウクライナ首都の名称変更は「正義」なのか?

「人間は見たいものしか見ない」

社会的リンチというB層の「正義」

人種問題における「正義」の暴走

「ルッキズム」批判は「正義」なのか?

言葉狩りは「正義」なのか?

若年層に選挙権を与えるのは「正義」なのか?

山本太郎と「正義感」について

 ✳︎

第四章 陰謀論に走る人たち 

「無知の知」と「無恥の恥」

不道徳としか言えない果物屋

「維新に殺される」

新型コロナは「バカ発見器」でもあった

ひっくり返って駄々をこねる老人たち

Yahoo!ニュースのコメント欄

知識はあるけど教養がないバカ

デマは言論の自由にあらず

社会の変化は元には戻らない

99%の人が知らない話

✳︎ 

第五章 無責任な人たち

安倍の次は維新に騙されるB層

メディアの劣化が止まらない

大阪都構想のデマと事実隠蔽

総選挙で湧いてきたB層

✳︎ 

第六章 恥知らずな人たち

飼い犬の遠吠え

安倍晋三の本質を映し出す一枚

ツッコミ待ち政治家だらけの国

日本の崩壊に気づいていないB層

日本最大の権力者は「改革バカ」

「ジューシー」発言は外部の拒絶

悪意なく嘘を重ねる人々

カルト化した自民党広報本部

百田尚樹の「歴史改ざんファンタジー」

日本人は悪に屈したネトウヨ用語を使い騒ぎ出した元首相

✳︎ 

おわりに−−人間は過去を忘れ野蛮は繰り返される

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オススメ記事

適菜 収

てきな おさむ

1975年山梨県生まれ。作家。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』、『小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?」(以上、講談社+α新書)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志との共著『思想の免疫力 賢者はいかにして危機を乗り越えたか』、『遅読術』、『安倍でもわかる政治思想入門』、『日本をダメにした新B層の研究』(KKベストセラーズ)、『ニッポンを蝕む全体主義』『安倍晋三の正体』(祥伝社新書)など著書50冊以上。「適菜収のメールマガジン」も好評。https://foomii.com/00171

 

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