日本人は1000年以上前から「サステナビリティ」を実践していた

 鉄筋コンクリートの老朽化、劣化の原因もメカニズムも単純ではないのですが、いずれにせよ、直接的原因は鉄筋の腐蝕で、問題の根源はコンクリートと鉄筋という異物質の組み合わせにあると思います。
 コンクリート造りにもかかわらず、例外的に、建造からおよそ2000年を経たいまでも完全な姿を見せているのはローマのパンテオンですが、これは無筋コンクリートで建造されています。“ローマンコンクリート”と呼ばれるコンクリート自体が、現代のコンクリートとは比較にならない耐久性を持つのですが、本質的なことは鉄筋を使っていないことなのです。
 このように、耐用年数の点で、素材である木と鉄筋コンクリート自体に決定的な違いがあることに加え、木造建築には鉄筋コンクリート建築には絶対まねができない利点があります。

“世界最古の木造建築”、法隆寺

 法隆寺は“世界最古の木造建築”ではありますが、じつは創建以来、何度か解体を含む大修理を経て今日に至っているのです。また、唐招提寺金堂も2000年から2009年にかけて“平成の大修理”が行われています。
 このように、木組みを主として構築される歴史的木造建築物は、解体・修理が可能なのです。そして、腐朽した部材の交換によって復元されます。古代日本の匠の智慧と経験が実現した五重塔に代表される木造建築は、いわば永遠の命を吹き込まれた永続的な建造物なのです。
 しかし、鉄筋コンクリートの建造物は、一度建てたら破壊されるまで、解体・修理などは不可能です。したがって、例えば、高層マンションの建造後、そこに柱の不正工事が発覚したような場合、新しく再建するほかはないのです。不正の柱だけ交換するというわけにはいきません。当然のことながら、解体された鉄筋コンクリート建造物は、再利用が不可能な瓦礫(がれき)の山になるほかありません。
 近年、人間の経済活動や社会活動の持続可能性を重視する、「サステナビリティ(sastainability)」という言葉をしばしば目にするようになりましたが、古代日本の匠たちは、1000年以上も前からそのような考え方に立脚していたのです。そのような思想の根幹をなす日本の文化・文明の本質が、自然との永続的な調和を志向する姿勢にあったからです。