創業230年の老舗茶商・主人が語る茶筌づくりの極意 「消耗品だからこそ、機能性を追求し、完璧な美を」 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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創業230年の老舗茶商・主人が語る茶筌づくりの極意 「消耗品だからこそ、機能性を追求し、完璧な美を」

第1回高山茶筌(奈良県生駒市) 竹茗堂(ちくめいどう)24代目・久保左文さん

「日本を代表する茶道文化を、
 陰ながら担っているという誇りが私の支えです」

茶道ならではの美しい所作は、未経験者にとっては高い敷居となっている。「もっと手軽に抹茶を飲んで頂ける環境を作りたい」と話す佐文さんは、「サッと振るだけでお茶が立つ」という長い柄の茶筌を開発した。

 左文さんにとって美しさとはどういうことでしょうか?
左文 非常に難しい質問ですが、やはり機能性や使いやすさを追求すると、必ず綺麗なもの、美しいものになる。我々は使いやすくて、美味しくお茶がたち、長持ちする茶筌作りに日々精進しています。その結果が美に繋がり、茶筌の良さを生み出すことになると思います。

 この美しさは500年もの間、重ねた精進の結果なのかもしれませんね。
左文 高山茶筌はすべての技術が一子相伝の形で、親から子へと書物ではなく口伝によって、500年間伝承してきたノウハウが詰まったものなんです。

 今、息子さんの25代目がご一緒に作業されていますね。
左文 茶筌作りは家族を含む職人が各工程を分業化して行います。分業で難しいのはどこかの工程で悪ければ、ずっと悪いままになる。自分が納得いく仕事ができるよう、教えながらやっています。

 伝統を守る、つなげていくことの難しさもあるのではないですか?
左文 この仕事だけで十分に食べていけるよう、将来に明るい展望が抱けるような仕事にしなければならない。将来があれば、必ず後継者は育っていきます。時代が変わり、茶道人口も減少していますが、時代と共に茶道も進化しなければならないと感じています。だから今は子々孫々まで繋いでいけるよう、いろんな種をまいていきたい。日本を代表する茶道文化を陰ながら、担っているという誇りが私の支えです。

●Kの視線●
その瞬間がたとえ無駄になったとしても、やるべきことはやり尽くす

 非常に細かい手仕事の結果、生まれてくる茶筌は本当に美しいものでした。しかし、自身が作ったものを消耗品と呼び、美しいものを作る作業そのものを「無駄な作業だ」とおっしゃる左文さんの姿勢や考え方に驚きました。でもそれは「使う人」のことを一番に思った末のことだったのです。だからこそ、使う人の手に渡ったときに、美しさが際立つ。これぞ匠というか、モノづくりの心持ち、もっとも大事なことだと思います。

 

竹茗堂 左文(ちくめいどう さぶん)
■所在地 /〒630-0101 奈良県生駒市高山町6439-3
■TEL 0743-78-0034(代) 
■営業時間 / 10:00~16:00
■定休日 / 日・祝日
「竹茗堂 左文」サイトhttp://www.chikumeido.com/index.html

PROFILE

 

K(ケイ)
1983年韓国ソウル生まれ。2005年デビューし、「Only Human」が大ヒット。以降もピアノ弾き語りのスタイルで、シンガーソングライターとして、J-POP界で活躍している。2014年タレントの関根麻里と結婚。昨年、第一子が生まれた。
Kオフィシャルサイト http://www.club-k.cc/

●番組情報●
「伝統の継承~笑顔に逢いに」 
三重テレビ 毎土20:25~20:55
KBS京都 毎土10:30~11:00
びわ湖放送 毎土10:30~11:00
奈良テレビ 毎日 18:30~19:00 
9月24日放送予定「岡崎石工品~石の町の匠達~」
 

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寺野 典子

てらの のりこ

1965年兵庫県生まれ。ライター・編集者。音楽誌や一般誌などで仕事をしたのち、92年からJリーグ、日本代表を取材。「Number」「サッカーダイジェスト」など多くの雑誌に寄稿する。著作「未来は僕らの手のなか」「未完成 ジュビロ磐田の戦い」「楽しむことは楽じゃない」ほか。日本を代表するサッカー選手たち(中村俊輔、内田篤人、長友佑都ら)のインタビュー集「突破論。」のほか中村俊輔選手や長友佑都選手の書籍の構成なども務める。


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