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「カリスマ瘦せ姫」の存在を知っていますか?
摂食障害を「個性」として認め合ってみたら……

摂食障害になった女性たちとの30年余りの交流の軌跡が話題の書に!

 それを見た瞬間、彼女の底知れない孤独感に戦慄(せんりつ)しました。やっと手に入れた居場所、というより、必死につかんでいた救命の浮き輪さえ、簡単に奪われ、真っ暗な海を漂わなくてはいけないような……。こうした仕打ちは、彼女をさらに絶望へと近づけ、彼女に共感する瘦せ姫たちをも落胆させてしまいます。

 ではなぜ、こういうことが起きてしまうのかというと——。同調性、それも健全さをもって絶対とする同調性が世間では重んじられるからです。自分が健全でありたいと願うあまり、世の中全体もそうでなくてはならない、と考える人たちが彼女のような存在を許容できず、排除しようとするのです。

 実際、彼女の画像や記事を見ることで、摂食障害を悪化させたりする人もいるかもしれません。ただ、それはダイエット同様、両刃の剣です。ダイエットで健康になる人もいれば、病気になる人もいるように、彼女の存在がプラスになるかどうかはケースバイケースでしょう。

 にもかかわらず、彼女が必死に見つけた居場所を簡単に奪える人には、もし自分が彼女のような立場だったらという想像力が欠けているのでしょう。そのほうがよっぽど不健全なことだという見方も成立するはずなのですが……。

 日本人は、この同調性というものが強い国民だともいわれます。ちなみに、脳科学者の中野信子によれば「人間の意思決定」には「人の目や世間に従い、空気を読もう、という方法と、自分自身で、人の意見を聴かずに決める、という方法」とがあり、東アジア、とくに日本では、前者を好む人が圧倒的優位なのだそう。後者派については「3割以下」にすぎないといいます(註1)。

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エフ=宝泉薫

エフ ほうせんかおる

1964年生まれ。主に芸能・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版。2007年からSNSでの執筆も開始し、現在、ブログ『痩せ姫の光と影』(http://ameblo.jp/fuji507/)などを更新中。2016年に『瘦せ姫 生きづらさの果てに』を出版し、話題となる。

 

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  • 2016.08.26