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「瘦せること」が生きる価値。
現代女性がはまる不完全拒食マニュアルとは

日本の摂食障害患者数は2万6000人。その予備軍は10倍以上の衝撃!

 一方、吐きにくさゆえ「鬼食材」とされているのが「白米」や「パスタ」などですが、大量の水分と一緒に摂れば大丈夫という人もいて、ここにも個人差があります。

 水分といえば、仕上げにやる「すすぎ」も完吐きの成否を左右することに。吐いたあと、ぬるま湯や水を飲み、それをまた吐くことで胃の中の吐き残しを洗い流します。これを数回、行なうわけです。

 専門用語としてはほかに「マー」というものもあります。シンガポールのマーライオン像に由来し、吐くことを指す隠語です。最高レベルに吐けたことを意味する「ミラクルマー」ができるようになれば、瘦せられる可能性も上がりますし、吐くこと自体が楽しくなってきたりもします。

 しかし、そのぶん、エスカレートしやすいというリスクも否めません。嘔吐をする瘦せ姫はその回数を「R(ラウンド)」という言い方で表現したりしますが、一日1Rだったのが、2R、3Rと増えていき、当然、費やす時間も長くなって、日常生活にも支障をきたすようになったりするのです。

 また、これは指吐きにもいえることですが、胃液まで排出することになるので、胃酸の影響で歯が溶けやすくなります。うがいなどで口の中の酸を薄めたり、フッ素入りの歯磨き粉によるケアも可能ではあるものの、強く磨きすぎると逆効果だったりもして、抜本的解決にはいたりません。

 そんななか、吐きダコもできないし、歯も溶けないなど、メリットに事欠かないのがチューブ吐きです。ホームセンターで売られているようなチューブを使って、胃の中のものを外に出す、というやり方で、医療にも応用されている科学的方法なのですが……。

 医療の専門家が医療用カテーテルなどを用いて行なうのではなく、素人が医療以外の目的でどこにでも売られているようなチューブでやろうとするのですから、安全だとはいえません。にもかかわらず、そのメリットの多さから、魅力を感じる人が少なくないのも事実です。

 たとえば、ある瘦せ姫はこう言いました。

「私もやってみたいけど、中学生にチューブはまだ早いのかな」

 彼女は当時、中3で、すでに指吐きや腹筋吐きをやっているようでした。が、それらによる効果に限界を感じ、チューブ吐きへの興味を強めていたのです。

 SNSでこの言葉を目にしたとき「チューブ」が「口紅」などと同じくらいカジュアルな感じで使われていることに、ドキリとしました。つまりはそれほど、瘦せ姫たちにとって身近で魅力的なものでもあるのだと。しかし、彼女は同時に、チューブ吐きの怖さも感じ取っていたわけです。

 そんなチューブ吐きの魅力、いや、魔力とはどういうものなのでしょうか。

(つづく……)

※明日のBEST TIMESで「つづき」記事を公開します。

 

 【著者プロフィール】 

エフ=宝泉薫(えふ=ほうせん・かおる) 

1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』などに執筆する。また健康雑誌『FYTTE』で女性のダイエット、摂食障害に関する企画、取材に取り組み、1995年に『ドキュメント摂食障害—明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版。2007年からSNSでの執筆も開始し、現在、ブログ『痩せ姫の光と影』(http://ameblo.jp/fuji507/)などを更新中。

 

 

 

 

 

 

 

 

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エフ=宝泉薫

エフ ほうせんかおる

1964年生まれ。主に芸能・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版。2007年からSNSでの執筆も開始し、現在、ブログ『痩せ姫の光と影』(http://ameblo.jp/fuji507/)などを更新中。2016年に『瘦せ姫 生きづらさの果てに』を出版し、話題となる。

 

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