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新卒一括採用から離脱した日本人は海外就職で成功できるか

現在観測 第41回

 まず、シンガポールで最も伝統のあるホテルの営業として採用されたOさん。彼女は学生時代に1年間南米に留学され、その後シンガポールのホテル関連の企業でインターンシップを経験し、ホテルとの関連業務をしていたことが評価されてシンガポール企業に内定をもらいました。このホテルでの日本人採用は初めてだったらしく、彼女の担当は日系企業への営業開拓。2年間勤めた後にシンガポールにアジア統括拠点を持つ、大手グローバルIT企業の営業として転職されました。
 2人目のMさんは、海外就職を目指して戦略的にインターンシップをすることを決意し、大学時代に日本で2社、マレーシアで1社のインターンシップを経験。特に人材会社での経験を積み、そのことが評価されてシンガポールにある米国のマーケットリサーチ会社に就職。現在は彼女も転職をして、Oさんと同じ企業の営業として活躍中です。
 ふたりに共通することは、「即戦力としてアピールできるような経験をインターンシップで積んだこと」「明確な目的を持って就職活動をしたこと」だと思います。私も大学時代にインターンシップを経験しましたが、彼女たちとは違ってその企業で働く人と話したり、実際にどんな業務内容なのかを知りたい、という目的意識が強く、インターンシップを通して「業務経験を積んでスキルアップする」とは考えていませんでした。しかし、彼女たちのように新卒で海外就職を実現させている人たちは、自分のキャリアをどう組み立てていくかを真剣に考え、前に進むために必要な「武器」を学生の時から揃えているのです。

◆自分に必要なスキルを見極める

 なんとなく憧れだけで「海外で働いてみたい」と思っても、現実は厳しいもの。たとえば、日本人を大量採用するコールセンターなどで働く場合は「日本語が話せること」が必要条件なので、そのハードルは高くないかもしれません。ただ、本当に海外就職を自分のキャリアステップに繋げたいのであれば、自分の能力に対する客観的視点を持ち続け、何を身に付ければより自分に付加価値を付けられるかを考えながら、やることを選択していく必要があります。
 この考え方は、新卒で海外に出てくる人だけではなく、社会人経験を経てから海外就職をする人にも当てはまるものです。「日本」という環境を出た瞬間、自分が戦う相手は「世界中の人」となり、一気に母数が広がります。私は海外で働き始めて、より「自分ができること」や「次のキャリアステップに向けて必要なスキル」について意識するようになりました。日本ではひとつの会社の中にずっと勤める終身雇用制度がベースの考え方になっていますが、海外では自分のスキルをベースにより良い条件の仕事を求めて転職をする傾向が強いため、こういった考え方をするのかもしれません。日本と海外では、日系企業と外資企業のどちらにオファーを出すかにもよりますが、就職活動で求められることも必要とされるスキルも変わってきます。日系企業であれば「日本人として」働くことを求められる場合が多いので、日本での職業経験を積んだ方が有利になることも。また、外資企業であれば働く国にもよりますが、ビジネスレベルの英語は必須だったり、自分の職種に対する深い専門スキルを求められたり。自分に今必要なものは何なのか、新卒、転職に関わらず、正しい情報を集めながら実現のために動いていくことが必要となるのではないでしょうか。

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濱田 真里

はまだ まり

『なでしこVoice』代表。

1987年埼玉県出身。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。大学3年次に1年間休学をして世界の現状を見るために6カ国でボランティアをしながら世界22カ国をバックパッカーで旅する。その後の就職活動中に「海外の就職情報が欲しい」と思ったが、 欲しい情報が見つからなかったので、「自分で作ろう」と決意。 2011年に世界で働く日本人女性のインタビューサイト『なでしこVoice』を立ち上げる。 海外まで自分で足を運び、 女性に直接インタビューすることをモットーとし、現在までにインタビューした人数は300人、海外就職の相談にのった人数は1000人以上に及ぶ。「女性×海外就職」というキーワードでのサイトのGoogle検索率はトップ。大学卒業後は通信事業会社、編集事務所を経て、現在は『なでしこVoice』の運営や、海外就職をしたい人の応援サイト『ABROADERS』の編集長として活動中。twitter:@hamamariri


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