ドラッカーが最も認めた日本人経営者ーー 渋沢栄一のスゴさ |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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ドラッカーが最も認めた日本人経営者ーー 渋沢栄一のスゴさ

【連載】「あの名言の裏側」 第4回 渋沢栄一編(4/4) 人間の本質を射貫く名言

 一方では、こんな熱い訓言もあります。

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すべて世の中の事は、
もうこれで満足だという時は、
すなわち衰えるときである。
(『渋沢栄一訓言集』より)
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 あらゆることにおいて「これで満足」と感じたときが衰えの始まりだ、ということです。これは、「向上心やハングリーさを常に持ち続けていないと、どんどん衰えてしまうから注意せよ」と解釈することもできるでしょうし、「何事も『これで十分』ということはない。いつも改善すべき点はないか、意識を向けておこう」と読み解くこともできそうです。 
 このように渋沢氏の言説には、日々の暮らしで心がけたり、実践できたりすると役立ちそうな指摘も数多く存在しています。実は、思いのほか身近で親しみやすい一面もあるのです。

 さて、渋沢栄一編は今回で終了となります。最後に、このエピソードを紹介しましょう。
 渋沢氏は、かのピーター・ドラッカー(経営学者)にも影響を与えました。“経営の神様”とも呼ばれるドラッカーは、名著『マネジメント』の序文で、このように綴っています。
「率直にいって私は、経営の『社会的責任』について論じた歴史的人物の中で、かの偉大な明治を築いた偉大な人物の一人である渋沢栄一の右に出るものを知らない。彼は世界のだれよりも早く、経営の本質は『責任』にほかならないということを見抜いていた」
 ドラッカーにここまで高く評価された日本人経営者は、後にも先にも渋沢栄一氏だけです。
 ドラッカーは、日本に100年以上続く長寿企業が多いことに興味を持ち、日本の経営者たちを研究するなかで渋沢氏に出会いました。渋沢氏の業績や思想に感銘を受けたドラッカーは、研究のために来日した際にも渋沢氏について熱心に質問を重ねたと伝えられています。
 “日本資本主義の父”が遺した箴言は、時代や国を超える普遍性を備えている、ということでしょう。

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漆原 直行

うるしばらなおゆき




1972年東京都生まれ。編集者・記者、ビジネス書ウォッチャー。大学在学中より若手サラリーマン向け週刊誌、情報誌などでライター業に従事。ビジネス誌やパソコン誌などの編集部を経て、現在はフリーランス。書籍の構成、ビジネスコミックのシナリオなども手がける。著書に『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』、『読書で賢く生きる。』(山本一郎氏、中川淳一郎氏と共著)、『COMIX 家族でできる 7つの習慣』(シナリオ担当。伊原直司名義)ほか。

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