ここまでの裏MVPは優勝がモチベーション<br />カープに不可欠な元侍ジャパン投手の献身 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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ここまでの裏MVPは優勝がモチベーション
カープに不可欠な元侍ジャパン投手の献身

四半世紀ぶりのセ界制覇へマジック点灯目前忘れてはならない右腕の存在

「僕は便利屋でいいんです」 

 若い投手が多い広島ブルペン陣の中で、今村もまだ25歳と若い。だが、経験値では1軍の広島救援陣では群を抜く。12年には69試合に登板し、防御率1.89。11年から13年まで3年連続で50試合以上に登板した。13年春のWBCでは日の丸も背負った。

 ただ、相手を抑えることに必死な経験の浅い若手投手とは違い、今村は状況に応じて投球を変える。追う展開であれば、反撃に転じやすいようテンポを大事にする。より勢いづけるために、あえて三振を狙いに行く。4月9日阪神戦では前の打席2ランの江越大賀を真っすぐを5球続けて空振り三振に仕留め、逆転勝利につなげた。

 どこでも投げていたように感じるほどだった。勝ちパターンの投手であれば、出番へ向けてある程度逆算した準備が可能だが、今村はいつ投げるか分からない立場だった。「何度も(肩を)つくっていたこともある」。表に出ている数字だけでは測れない消耗が右腕にはあったはず。それでも今村は「誰かがやらないといけない。誰でもできるとも思っていない。僕はまだ便利で構わない」と袖をまくった。

 チーム全体を見る力は、中継ぎに配置展開された入団2年目から備わっていた。「今は先発よりも、中継ぎの方がいない。それなら僕は中継ぎでいいと思っている。便利屋でいいんです」。当時まだ20歳の右腕はすでに、チーム状況を冷静に考えられていた。

 身を粉にする献身性が、ここ数年の不調につながったのも事実だった。今季のフル回転による影響も心配されるところ。だが、25年ぶり優勝が1つのモチベーションとなり、右腕を奮い立たせている。「ここまで来たら行けるところまで行く。6連投でもやりますよ」。今村は今日もブルペンで腕をまくり、出番を待つ。

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前原 淳

まえはら じゅん

1980年7月20日、福岡県生まれ。現在は外部ライターとして日刊スポーツ・広島担当。'03年に大学を卒業後、上京。編集プロダクションで4年間の下積みを経て、2007年に広島の出版社「サンフィールド」に入社。「アスリート」編集長などを歴任し、2014年12月にフリー転身。著書に、広島カープが16年ぶりにAクラス入りを達成した2013年の奇跡を描く「カープストーリー」(KKベストセラーズ)がある。




 



 


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