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田原総一朗 「一般言われている偉い人、そして政府、国家は国民を騙すもの、信頼してはいけないと思い始めた。それがジャーナリストになる原体験」

田原総一朗さん30日毎日連載 Q18.子供時代に戦争を体験された田原さんの終戦記念日に対する思いをお聞かせください。

『変貌する自民党の正体』(ベスト新書)を上梓。常に第一線のジャーナリストとして活躍したきた田原総一朗氏に話を聞いた。

Q18.子供時代に戦争を体験された田原さんの終戦記念日に対する思いをお聞かせください。

 
 
 

 僕が小学校に入った1941年に第二次世界大戦、太平洋戦争が始まった。前にも言いましたが、その時は「この戦争は聖戦」「米英蘭からアジアを解放する」「正しい戦争」と教えられていた。それが5年生になった時に終戦を迎えて、話が180度変わってしまった。「あの戦争は間違っていた」「侵略戦争だった」。それで「戦争は悪いことだから体を張って阻止せよ」と。それで僕が高校1年の1950年に朝鮮戦争が始まった時も、小学校の教師が入ったように戦争反対の声をあげたんだ。すると、高校の教師からは「お前らは共産党員か」と言われてね(笑)。
 そこから僕は、教師はもちろん、一般言われている偉い人、そして政府、国家は国民を騙すもの、信頼してはいけないと思い始めた。まあ、それがジャーナリストになる原体験なんだけど、今の日本の風潮にはすごく危機感を持っています。
 というのも、憲法改正や集団的自衛権の行使容認など、議論が高まるのはいいのだけど、安倍政権は、日本が「戦争ができる国」に向かわせようとしている雰囲気が強いことです。
 日本は、現行憲法をうまく使いこなして戦争を回避してきた。石原慎太郎さんは「アメリカから押し付けられたものだからぶっ潰しまえ」なんてことを言っていたけど、憲法第9条第1項の「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」という条項によって、アメリカの依頼であっても、朝鮮にもベトナムにも、イラク戦争の時も、武力の派遣を断ることができた。
 一つ言っておきます。今の憲法が公布された1946年は、まだ自衛隊、その前身である警察予備隊も保安隊もなかった。つまり、非武装を前提とした憲法だったわけです。そこに自衛隊という「武力」を持つ組織が設立されてしまったのだから、誰が考えてもこれは憲法違反なんです。
 その組織を使って、例えば朝鮮半島有事の時に日本人の保護、救出のために「新三要項」に限定するという形で、「集団的自衛権行使」を認めた。この考え方は、極めて危険なんです。国外の戦争に巻き込まれていく可能性がある。僕は、我が国に明白な危険がある場合なら、旧来の個別的自衛権で十分に対応できるのではないかと思っています。解釈改憲をしてまで、集団的自衛権を認める必要はない。
 太平洋戦争だって、負けると分かっていて止めることができなかった。理由があれば、どんどんエスカレートしてまうものなんです。僕はあの戦争は間違っていたと思っている。
 でも、日本は自前の安全保障を考えなくてはいけない。つまり、憲法第9条第1項は変えずに自衛隊を認めることは必要。そして他国から攻撃された時のみ、自衛のために武力を発動するのは必要だという考え方です。国外に出て行ってまで「戦争ができる国」にしてはいけない。

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田原 総一朗

たはら そういちろう

ジャーナリスト。1934年滋賀県生まれ。60年早稲田大学文学部卒業。同年岩波映画製作所入所。64年東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数。著書に『日本の戦争』(小学館)、『塀の上を走れ 田原総一朗自伝』講談社)、『安倍政権への遺言 首相、これだけはいいたい 』(朝日新聞出版)など多数の著書がある。


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